人気イケメン俳優・鈴木さん(仮名)から聞いた話です。
鈴木さんは映画やドラマはもちろん、持ち前の個性的なキャラクターと機転のきくトークが買われて、いくつかのバラエティ番組でもレギュラー出演しています。
もともと劇団出身で下積み時代が長かったからか、昔からの熱狂的ファンが多数いることでも知られています。
売れると急にファンへの態度が横柄になったり乱雑になる芸能人はそれこそたくさんいますが、鈴木さんはずっとファンを大事にする、鏡のような俳優です。でもまさか、それが仇になるとは……。
5年前のある日。鈴木さんはレギュラーのバラエティ番組収録で都内の某スタジオにいました。
そのスタジオに来た時は、決まって近くの蕎麦屋で天ぷらソバを出前してもらうのが鈴木さんの中でお決まりのパターンでした。
その日も、楽屋に入ってすぐに注文したのですが、いつもなら30分程度で来る出前が、その日は何故か1時間経っても来ませんでした。
もしかしたら忘れられてるのか……、そう思い蕎麦屋に確認の電話をかけようとした時、楽屋のドアをノックする音がしました。やっと来たか、とドアを開けると……。
「お待たせしましたー!」
と小柄でショートカットの女性店員が頭を下げながら楽屋に入ってきました。
岡持ちから天ぷらソバを取り出し、テーブルの上に置くその女性。一見すれば元気の良い好印象な店員なのですが、鈴木さんは妙な違和感を覚えました。
女性が着てる割烹着風の制服のサイズが、明らかに合っていないのです。ブカブカでズボンの裾を引きずり踏みつけているほどでした。
そして爪には派手なネイルをほどこしていました。その蕎麦屋はちゃんとしたお店でネイルを許すようなお店ではないのに……。
さらに、いつもならまずドアの所で会計を済ませて、そのまま蕎麦をうけとる流れなのですが、その女性はドアを開けるやいなや楽屋にズカズカと入り込んできたのです。
「お会計は?」
と鈴木さんが聞くと、女性は少し焦ったような表情をして、
「えっと……800円です!」
と答えました。
それはまったく違う値段で、本当の値段は1200円でした。
いつも同じ天ぷらソバを頼んでいる鈴木さんが
「え? 1200円だよね?」
と言うと、女性は
「あーそうでした! 1200円です! 全部食べてくださいね!」
と代金を受け取るなり、そそくさと楽屋を後にして行ったそうです。
気持ち悪さを覚えながらも、収録時間も迫っていたのでサッと食べてしまおうと天ぷらソバのラップを外して箸をくぐらせると……、すくいあげた麺に大量の長い黒髪が絡みついていました。
「うわぁっ なんだよこれ……」と底の方をすくうと、まるでお団子頭のように固まった大量の髪の毛が、ドブさらいのように上がってきました。
これにはさすがの鈴木さんも怒り心頭だったそうで、すぐに蕎麦屋に電話をかけたそうです。
しかし、何度コールしても蕎麦屋は電話に出る気配はありませんでした。そうこうしているうちに収録が始まる時間になり、鈴木さんは空腹のまま数時間の収録を終えました。
イライラしながらスタジオを出てタクシーを停めようとすると、昼間に出前をとった蕎麦屋の周りに大きな人だかりが出来ているのを発見しました。
何やら物々しい雰囲気で、近づいてよく見ると警官もたくさんいて立ち入り禁止のテープが張られていました。
聞けば、店内で殺人事件が起きたというのです。「もしかして何か関係があるんじゃ……」と鈴木さんは昼間の出前の件を警官に話し、そのまま重要証言者として署に同行しました。
聞けば、その店で午前中に店員が1人で仕込みをしている時、何者かが侵入し、店員の首を後ろからロープで絞殺したと言うのです。
そして店の防犯カメラが捉えていた映像を見せて貰うと……鈴木さんは全身の血の気が引いてしまいました。
そこに写っている犯人であろう人間は、楽屋に出前を持ってきたあの女性だったのです──。
3日も経たずに女性は逮捕されました。
鈴木さんの熱狂的ファンでした。彼と直接触れ合いたいが為に、蕎麦屋の店員を殺してなりすましたと言うのです……。
それからというもの鈴木さんは、ファンと距離をおいて接するようになってしまったそうです。
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鈴木さんは映画やドラマはもちろん、持ち前の個性的なキャラクターと機転のきくトークが買われて、いくつかのバラエティ番組でもレギュラー出演しています。
もともと劇団出身で下積み時代が長かったからか、昔からの熱狂的ファンが多数いることでも知られています。
売れると急にファンへの態度が横柄になったり乱雑になる芸能人はそれこそたくさんいますが、鈴木さんはずっとファンを大事にする、鏡のような俳優です。でもまさか、それが仇になるとは……。
5年前のある日。鈴木さんはレギュラーのバラエティ番組収録で都内の某スタジオにいました。
そのスタジオに来た時は、決まって近くの蕎麦屋で天ぷらソバを出前してもらうのが鈴木さんの中でお決まりのパターンでした。
その日も、楽屋に入ってすぐに注文したのですが、いつもなら30分程度で来る出前が、その日は何故か1時間経っても来ませんでした。
もしかしたら忘れられてるのか……、そう思い蕎麦屋に確認の電話をかけようとした時、楽屋のドアをノックする音がしました。やっと来たか、とドアを開けると……。
「お待たせしましたー!」
と小柄でショートカットの女性店員が頭を下げながら楽屋に入ってきました。
岡持ちから天ぷらソバを取り出し、テーブルの上に置くその女性。一見すれば元気の良い好印象な店員なのですが、鈴木さんは妙な違和感を覚えました。
女性が着てる割烹着風の制服のサイズが、明らかに合っていないのです。ブカブカでズボンの裾を引きずり踏みつけているほどでした。
そして爪には派手なネイルをほどこしていました。その蕎麦屋はちゃんとしたお店でネイルを許すようなお店ではないのに……。
さらに、いつもならまずドアの所で会計を済ませて、そのまま蕎麦をうけとる流れなのですが、その女性はドアを開けるやいなや楽屋にズカズカと入り込んできたのです。
「お会計は?」
と鈴木さんが聞くと、女性は少し焦ったような表情をして、
「えっと……800円です!」
と答えました。
それはまったく違う値段で、本当の値段は1200円でした。
いつも同じ天ぷらソバを頼んでいる鈴木さんが
「え? 1200円だよね?」
と言うと、女性は
「あーそうでした! 1200円です! 全部食べてくださいね!」
と代金を受け取るなり、そそくさと楽屋を後にして行ったそうです。
気持ち悪さを覚えながらも、収録時間も迫っていたのでサッと食べてしまおうと天ぷらソバのラップを外して箸をくぐらせると……、すくいあげた麺に大量の長い黒髪が絡みついていました。
「うわぁっ なんだよこれ……」と底の方をすくうと、まるでお団子頭のように固まった大量の髪の毛が、ドブさらいのように上がってきました。
これにはさすがの鈴木さんも怒り心頭だったそうで、すぐに蕎麦屋に電話をかけたそうです。
しかし、何度コールしても蕎麦屋は電話に出る気配はありませんでした。そうこうしているうちに収録が始まる時間になり、鈴木さんは空腹のまま数時間の収録を終えました。
イライラしながらスタジオを出てタクシーを停めようとすると、昼間に出前をとった蕎麦屋の周りに大きな人だかりが出来ているのを発見しました。
何やら物々しい雰囲気で、近づいてよく見ると警官もたくさんいて立ち入り禁止のテープが張られていました。
聞けば、店内で殺人事件が起きたというのです。「もしかして何か関係があるんじゃ……」と鈴木さんは昼間の出前の件を警官に話し、そのまま重要証言者として署に同行しました。
聞けば、その店で午前中に店員が1人で仕込みをしている時、何者かが侵入し、店員の首を後ろからロープで絞殺したと言うのです。
そして店の防犯カメラが捉えていた映像を見せて貰うと……鈴木さんは全身の血の気が引いてしまいました。
そこに写っている犯人であろう人間は、楽屋に出前を持ってきたあの女性だったのです──。
3日も経たずに女性は逮捕されました。
鈴木さんの熱狂的ファンでした。彼と直接触れ合いたいが為に、蕎麦屋の店員を殺してなりすましたと言うのです……。
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