芸能人のマネージャーは、担当の芸能人に常に帯同しているため、ファンの人に顔を覚えられることも多いといいます。
ある芸能事務所で新人アイドルのマネージャーをしていた椎名さん（仮名）も例外ではありません。
椎名さんは愛嬌のあるかわいらしいルックスだったので、ファンの間でちょっとした話題になっていました。
担当するアイドルの握手会の時、椎名さんがホームページにアップするために握手会の様子を写真で撮影していると、
「あの……」
突然背後から声をかけられました。
椎名さんが振り向くと、眼鏡を掛けた長身の男が立っていました。病的に痩せた中年男性が急に背後に現れたので驚きましたが、その男がプレゼントを抱えていたので、
「あ、○○（アイドルの名前）へのプレゼントでしたら入口のスタッフにお渡しください」
と教えました。すると男は、
「いや……そうじゃなくて、あなたに」
と、椎名さんにプレゼントを差し出してきました。
「えっ、えっと私にですか？ あ、あの、すみません。そういうのはちょっと」
椎名さんが断ると、男は無言のまま立ち去って行きました。
しかしそれから、その男はイベントの度に椎名さんにプレゼントを差し出してくるようになりました。
そのうち男の行動はどんどんエスカレートし、イベントが終わったあとに家の近くまでつけてくるようになったそうです。
「本当に勘弁してほしいです……」
普段気丈に振る舞う椎名さんもさすがに参ってしまい、周囲に漏らすようになりました。事務所側も事態を重く見て、椎名さんの担当を男性演歌歌手に変更しました。
これでやっと仕事に集中できる。椎名さんは一安心しました。しかし、担当の変更も効果はありませんでした。
演歌歌手に担当が変わって初めての仕事である東北の夏祭り会場に、その男が現れたのです。
ピンクの包み紙でラッピングされたいつものプレゼントを持って辺りを見回し、明らかに椎名さんを探しています。
「え、うそ……またいる……」
椎名さんは恐ろしくて泣きだしたい気持ちでしたが、その気持ちは次第に怒りに変わってきました。
せっかく心機一転がんばろうと思ったのに、東北まで追いかけてくるなんていい加減にしてほしい。
男は椎名さんを見つけ、プレゼントを差し出してきました。
「受け取ればいいんですよね。迷惑なので、もうやめてください」
椎名さんはきっぱりと言い放ってプレゼントを受け取りました。
「……開けてみて」
男が消えそうな小さい声で言いました。椎名さんは戸惑いましたが、これで終わりにしたかったので箱を開けました。
「なにこれ……」
箱の中に入っていたのは、何百枚もの椎名さんの写真でした。しかも裸のグラビアに椎名さんの顔写真を張り付けた、「アイコラ」のような写真ばかり。
「……だ、誰か来てください!!」
椎名さんの大声でたちまち人だかりができました。男は取り押さえられ、そのまま警察に逮捕されたそうです。
椎名さんはしばらく休みをもらい、郊外に引っ越すことにしました。男が逮捕されたとはいえ、家を知られているかもしれません。
引っ越しは順調に進みました。
無事に新しい部屋に荷物を搬入し終えると、
「作業完了しましたので、サインお願いします」
と、引っ越し業者の男性に声を掛けられました。
「はいはーい」
椎名さんがサインをして業者の男性に手渡すと、男性は目深にかぶった帽子を上げてこう言いました。
「結構遠くに引っ越しましたね。次は警察に言っちゃだめですよ」
それはまぎれもなく、しつこくイベント会場に現れていたあの男でした。少し太って眼鏡をしていなかったので、椎名さんは全く気付かなかったそうです。
椎名さんが驚きと恐怖で声も出せないでいると、
「今キャンペーン中なので、粗品差し上げます」
男が箱を差し出してきました。
ピンクの包み紙でラッピングされた、あのプレゼントの箱でした。
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ある芸能事務所で新人アイドルのマネージャーをしていた椎名さん（仮名）も例外ではありません。
椎名さんは愛嬌のあるかわいらしいルックスだったので、ファンの間でちょっとした話題になっていました。
担当するアイドルの握手会の時、椎名さんがホームページにアップするために握手会の様子を写真で撮影していると、
「あの……」
突然背後から声をかけられました。
椎名さんが振り向くと、眼鏡を掛けた長身の男が立っていました。病的に痩せた中年男性が急に背後に現れたので驚きましたが、その男がプレゼントを抱えていたので、
「あ、○○（アイドルの名前）へのプレゼントでしたら入口のスタッフにお渡しください」
と教えました。すると男は、
「いや……そうじゃなくて、あなたに」
と、椎名さんにプレゼントを差し出してきました。
「えっ、えっと私にですか？ あ、あの、すみません。そういうのはちょっと」
椎名さんが断ると、男は無言のまま立ち去って行きました。
しかしそれから、その男はイベントの度に椎名さんにプレゼントを差し出してくるようになりました。
そのうち男の行動はどんどんエスカレートし、イベントが終わったあとに家の近くまでつけてくるようになったそうです。
「本当に勘弁してほしいです……」
普段気丈に振る舞う椎名さんもさすがに参ってしまい、周囲に漏らすようになりました。事務所側も事態を重く見て、椎名さんの担当を男性演歌歌手に変更しました。
これでやっと仕事に集中できる。椎名さんは一安心しました。しかし、担当の変更も効果はありませんでした。
演歌歌手に担当が変わって初めての仕事である東北の夏祭り会場に、その男が現れたのです。
ピンクの包み紙でラッピングされたいつものプレゼントを持って辺りを見回し、明らかに椎名さんを探しています。
「え、うそ……またいる……」
椎名さんは恐ろしくて泣きだしたい気持ちでしたが、その気持ちは次第に怒りに変わってきました。
せっかく心機一転がんばろうと思ったのに、東北まで追いかけてくるなんていい加減にしてほしい。
男は椎名さんを見つけ、プレゼントを差し出してきました。
「受け取ればいいんですよね。迷惑なので、もうやめてください」
椎名さんはきっぱりと言い放ってプレゼントを受け取りました。
「……開けてみて」
男が消えそうな小さい声で言いました。椎名さんは戸惑いましたが、これで終わりにしたかったので箱を開けました。
「なにこれ……」
箱の中に入っていたのは、何百枚もの椎名さんの写真でした。しかも裸のグラビアに椎名さんの顔写真を張り付けた、「アイコラ」のような写真ばかり。
「……だ、誰か来てください!!」
椎名さんの大声でたちまち人だかりができました。男は取り押さえられ、そのまま警察に逮捕されたそうです。
椎名さんはしばらく休みをもらい、郊外に引っ越すことにしました。男が逮捕されたとはいえ、家を知られているかもしれません。
引っ越しは順調に進みました。
無事に新しい部屋に荷物を搬入し終えると、
「作業完了しましたので、サインお願いします」
と、引っ越し業者の男性に声を掛けられました。
「はいはーい」
椎名さんがサインをして業者の男性に手渡すと、男性は目深にかぶった帽子を上げてこう言いました。
「結構遠くに引っ越しましたね。次は警察に言っちゃだめですよ」
それはまぎれもなく、しつこくイベント会場に現れていたあの男でした。少し太って眼鏡をしていなかったので、椎名さんは全く気付かなかったそうです。
椎名さんが驚きと恐怖で声も出せないでいると、
「今キャンペーン中なので、粗品差し上げます」
男が箱を差し出してきました。
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