「さぁ始まりました!! チャバネモンキーのレディオホイホイ!」
「すっかり師走の今日この頃、みなさんいかがお過ごしですか~?」
……なんか固いなあ。
変にこなれてる感じを出さなくてもいいんじゃない? もっと若手芸人らしく緊張してます感があった方が好感度高いでしょ?
「あ…えっと始まったんですよね? ど、どうもチャバネモンキーです」
「緊張しすぎて口臭いわお前!」
……うん、このくらいが良いかも。
僕らチャバネモンキー(仮名)にラジオ出演の話がきたのは、わずか2日前のことでした。
もともと先輩の芸人がやる特番枠だったのですが、マネージャーのスケジューリングミスで都合がつかず、僕らにチャンスが回ってきたってわけです。
特番とはいえ初の冠番組。ここで結果を出せれば、レギュラーだって夢じゃない。このチャンスは逃せないと僕は相方をアパートに呼んでボイスレコーダーを使ってラジオの練習をしていました。
普段リスナーとして先輩芸人のラジオを聞いている時は、正直ラジオって割りと簡単なんじゃ……? なんて思っていましたが、いざ自分たちがマイクを前に「せ~の」で話してみると、いかに難しいかがわかりました。
こんなコトを言ったら芸人失格かもしれませんが、意識して面白いコトを言うのって、大変です。あーでもないこーでもないと言い合いながら、録っては聞きを繰り返し続けていたら、時刻は深夜2時半を回っていました。
小腹が空いた僕らはコンビニに弁当を買いに行くことにしました。コンビニに向かう道中、僕らに会話はありませんでした。
相方もおそらく同じ気持ちだったと思いますが、今にも心が折れそうだったのです。
こうして架空ラジオをやってみて、改めて自分たちの力のなさ、言いたくないですが、面白いコトを言う才能がないんじゃないか? お互いにそれを痛感していたのだと思います。
無言のまま弁当を買ってアパートに戻ると、ボイスレコーダーが録音しっぱなしになっていたことに気付きました。
「やべ、録音しっぱなしだった」と僕が消去しようとすると、「1回聞いてみようぜ。幽霊の声とか入ってたりして」と相方が言ってきたので、まぁ弁当を食べる間の暇つぶしにいいかと思って、巻き戻して再生ボタンを押しました。しばらく聞いていると……。
「……れ」
何やら声が聞こえた気がしました。「あれ? 今なんか聞こえたよな?」僕は急いでもう1度その部分を再生しました。
「……き……れ」
ボイスレコーダーに耳をすませてみると、確かに人の声が聞こえました。
誰も部屋にいるはずがないのに……。
僕ら2人はお互いの顔を見合わせました。すると相方の顔は明らかに恐怖でこわばっていました。
そしておそらく相方から見た僕も。
「切れ……って聞こえるよな?」、
「どういう意味……?」
僕は意を決して音量最大で再生しました。
「……あに……き……がんば……れ……」
兄貴、頑張れ? そう聞きとれた瞬間、相方が涙を流し始めました。僕はまったく訳がわかりませんでした。
「これ、俺の弟の声だわ」相方は何年も着古したジャージで涙をグッと拭いながらそう言いました。
何も声をかけてあげられませんでしたが、涙の意味はわかりました。
相方には、3年前にバイク事故で亡くなった弟がいました。僕は会ったことはありませんでしたが、相方から弟の話を聞いたことがありました。
相方の5つ下の弟は兄貴をとても慕っていて芸人活動も応援してくれていたと言います。
「兄貴 がんばれ」
天国の弟からの応援メッセージ。
僕らはすぐにまたラジオの練習を始めました。
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「すっかり師走の今日この頃、みなさんいかがお過ごしですか~?」
……なんか固いなあ。
変にこなれてる感じを出さなくてもいいんじゃない? もっと若手芸人らしく緊張してます感があった方が好感度高いでしょ?
「あ…えっと始まったんですよね? ど、どうもチャバネモンキーです」
「緊張しすぎて口臭いわお前!」
……うん、このくらいが良いかも。
僕らチャバネモンキー(仮名)にラジオ出演の話がきたのは、わずか2日前のことでした。
もともと先輩の芸人がやる特番枠だったのですが、マネージャーのスケジューリングミスで都合がつかず、僕らにチャンスが回ってきたってわけです。
特番とはいえ初の冠番組。ここで結果を出せれば、レギュラーだって夢じゃない。このチャンスは逃せないと僕は相方をアパートに呼んでボイスレコーダーを使ってラジオの練習をしていました。
普段リスナーとして先輩芸人のラジオを聞いている時は、正直ラジオって割りと簡単なんじゃ……? なんて思っていましたが、いざ自分たちがマイクを前に「せ~の」で話してみると、いかに難しいかがわかりました。
こんなコトを言ったら芸人失格かもしれませんが、意識して面白いコトを言うのって、大変です。あーでもないこーでもないと言い合いながら、録っては聞きを繰り返し続けていたら、時刻は深夜2時半を回っていました。
小腹が空いた僕らはコンビニに弁当を買いに行くことにしました。コンビニに向かう道中、僕らに会話はありませんでした。
相方もおそらく同じ気持ちだったと思いますが、今にも心が折れそうだったのです。
こうして架空ラジオをやってみて、改めて自分たちの力のなさ、言いたくないですが、面白いコトを言う才能がないんじゃないか? お互いにそれを痛感していたのだと思います。
無言のまま弁当を買ってアパートに戻ると、ボイスレコーダーが録音しっぱなしになっていたことに気付きました。
「やべ、録音しっぱなしだった」と僕が消去しようとすると、「1回聞いてみようぜ。幽霊の声とか入ってたりして」と相方が言ってきたので、まぁ弁当を食べる間の暇つぶしにいいかと思って、巻き戻して再生ボタンを押しました。しばらく聞いていると……。
「……れ」
何やら声が聞こえた気がしました。「あれ? 今なんか聞こえたよな?」僕は急いでもう1度その部分を再生しました。
「……き……れ」
ボイスレコーダーに耳をすませてみると、確かに人の声が聞こえました。
誰も部屋にいるはずがないのに……。
僕ら2人はお互いの顔を見合わせました。すると相方の顔は明らかに恐怖でこわばっていました。
そしておそらく相方から見た僕も。
「切れ……って聞こえるよな?」、
「どういう意味……?」
僕は意を決して音量最大で再生しました。
「……あに……き……がんば……れ……」
兄貴、頑張れ? そう聞きとれた瞬間、相方が涙を流し始めました。僕はまったく訳がわかりませんでした。
「これ、俺の弟の声だわ」相方は何年も着古したジャージで涙をグッと拭いながらそう言いました。
何も声をかけてあげられませんでしたが、涙の意味はわかりました。
相方には、3年前にバイク事故で亡くなった弟がいました。僕は会ったことはありませんでしたが、相方から弟の話を聞いたことがありました。
相方の5つ下の弟は兄貴をとても慕っていて芸人活動も応援してくれていたと言います。
「兄貴 がんばれ」
天国の弟からの応援メッセージ。
僕らはすぐにまたラジオの練習を始めました。
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