あれは、今から20年ほど前のこと。
僕がまだ小学3年生の時でした。
僕の実家は東北の田舎町にあるんですが、その近くには小さな神社があり、子供の頃の僕たちはよく、そこの境内で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりして遊んでいました。
「じゃんけんぽーん……あいこでしょっ! あいこでしょっ!」
「わぁ、負けたぁ!」
「やったぁ! ケンジが、お~にぃ~!」
「くっそぉ! じゃあ、いくぞ~! い~ち、に~、さ~ん、し~……」
じゃんけんで負けたケンジが鬼になり、僕を含む4人の子供たちが必死に隠れ場所を探そうと走り回っていた時、神社の神主さんは微笑みながら、その様子を見守ってくれていました。
境内にある大きな木の陰や植え込みの間、狛犬の裏側など、友人たちは次々と隠れていきましたが、隠れ場所がなかなか見つからずに焦っていた僕は、咄嗟に本堂の床下に潜り込んだんです。
すると、神主さんが慌てて僕のところへやって来て、言いました。
「僕、ダメダメ、そこは。そんなとこ、入っちゃダメだよ。ほら、早く出て!」
そんなことを言われても、今出ていったら見つかってしまうと思った僕は、
「やだぁ。もうちょっと、ここにいる」
そう駄々をこねると、神主さんは、さらに言いました。
「ダメだって! ほら、そんなとこにいたら、服が汚れて、お母さんに怒られるから! 早く出なさい!」
神主さんの声がさっきより少し大きくなり、口調もキツくなりましたが、それでも出ていこうとせず、その場でジッとしていると……、
「おい、ボウズ、今から10数えるうちに、そこを出ろ! でないと、おめぇ……ぶち殺すぞ」
神主さんは、静かに、今までとは全く違う重いトーンで僕に言いました。
その言葉を聞いた瞬間ドキッとして、僕は神主さんの顔を凝視しましたが、それは、さっきまでの穏やかな顔ではなく、まるで本物の鬼のような恐ろしい形相になっていました。
これは、本当にヤバいかもしれない……。
怖くなって、僕がガタガタと震えだした瞬間、
「い~ち、に~、さ~ん、し~……」
神主さんが重いトーンのまま、数を数えだしました。
「ご~、ろ~く、し~ち、は?ち……」
と、たまらずに「わぁ~!!!」と叫びながら、僕は必死の力を振り絞って床下から這い出しました。
その異様な様子は鬼のケンジの目にすぐ留まり、僕は一番に見つかってしまいましたが、僕の目からボロボロ涙が出ていたため、ケンジは驚きました。
そして、僕はその後、ケンジと一緒に他の仲間たちを探しに行き、全員見つかったところで、自分がさっき本堂の床下で遭った怖い出来事を話しました。
すると、みんなは
「あの優しいおじさんが?」
「ウソだろ?」
と口々に言い、そこへ、あの神主さんがタイミングよく現れて、みんなに飴を配りました。
「ほら、みんな、これ、おあがり。それで、今日はもうおしまい。暗くなる前にちゃんとおウチに帰りなさいね」
そう言って僕にも飴をくれたのですが、僕の脳裏には、あの時の恐ろしい神主さんの顔が焼き付いてしまい、それ以後、みんなが神社で集合すると言っても、あそこで遊ぶ気にはなれませんでした。
それから半年ほど経った頃でしょうか。その神社の本堂の床下から若い女性の遺体が見つかったのは。
神社の周りには大勢の人だかりができ、また、普段絶対に来ることのないテレビの撮影クルーも来ていました。
その時、地元の人が僕のことをテレビ局の人に話したのか、レポーターが僕にインタビューをしてきました。
「君は、神主さんに怒られたことがあるって聞いたんだけど、本当?」
「うん。友達とかくれんぼをしてたら、そこは入っちゃダメって」
そう言って、本堂の床下を指差した映像……これが、今現在タレントとしてテレビに出演している僕の、本当の意味でのデビュー映像です。
でも、さすがに、この話はテレビでは流せませんよね。
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僕がまだ小学3年生の時でした。
僕の実家は東北の田舎町にあるんですが、その近くには小さな神社があり、子供の頃の僕たちはよく、そこの境内で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりして遊んでいました。
「じゃんけんぽーん……あいこでしょっ! あいこでしょっ!」
「わぁ、負けたぁ!」
「やったぁ! ケンジが、お~にぃ~!」
「くっそぉ! じゃあ、いくぞ~! い~ち、に~、さ~ん、し~……」
じゃんけんで負けたケンジが鬼になり、僕を含む4人の子供たちが必死に隠れ場所を探そうと走り回っていた時、神社の神主さんは微笑みながら、その様子を見守ってくれていました。
境内にある大きな木の陰や植え込みの間、狛犬の裏側など、友人たちは次々と隠れていきましたが、隠れ場所がなかなか見つからずに焦っていた僕は、咄嗟に本堂の床下に潜り込んだんです。
すると、神主さんが慌てて僕のところへやって来て、言いました。
「僕、ダメダメ、そこは。そんなとこ、入っちゃダメだよ。ほら、早く出て!」
そんなことを言われても、今出ていったら見つかってしまうと思った僕は、
「やだぁ。もうちょっと、ここにいる」
そう駄々をこねると、神主さんは、さらに言いました。
「ダメだって! ほら、そんなとこにいたら、服が汚れて、お母さんに怒られるから! 早く出なさい!」
神主さんの声がさっきより少し大きくなり、口調もキツくなりましたが、それでも出ていこうとせず、その場でジッとしていると……、
「おい、ボウズ、今から10数えるうちに、そこを出ろ! でないと、おめぇ……ぶち殺すぞ」
神主さんは、静かに、今までとは全く違う重いトーンで僕に言いました。
その言葉を聞いた瞬間ドキッとして、僕は神主さんの顔を凝視しましたが、それは、さっきまでの穏やかな顔ではなく、まるで本物の鬼のような恐ろしい形相になっていました。
これは、本当にヤバいかもしれない……。
怖くなって、僕がガタガタと震えだした瞬間、
「い~ち、に~、さ~ん、し~……」
神主さんが重いトーンのまま、数を数えだしました。
「ご~、ろ~く、し~ち、は?ち……」
と、たまらずに「わぁ~!!!」と叫びながら、僕は必死の力を振り絞って床下から這い出しました。
その異様な様子は鬼のケンジの目にすぐ留まり、僕は一番に見つかってしまいましたが、僕の目からボロボロ涙が出ていたため、ケンジは驚きました。
そして、僕はその後、ケンジと一緒に他の仲間たちを探しに行き、全員見つかったところで、自分がさっき本堂の床下で遭った怖い出来事を話しました。
すると、みんなは
「あの優しいおじさんが?」
「ウソだろ?」
と口々に言い、そこへ、あの神主さんがタイミングよく現れて、みんなに飴を配りました。
「ほら、みんな、これ、おあがり。それで、今日はもうおしまい。暗くなる前にちゃんとおウチに帰りなさいね」
そう言って僕にも飴をくれたのですが、僕の脳裏には、あの時の恐ろしい神主さんの顔が焼き付いてしまい、それ以後、みんなが神社で集合すると言っても、あそこで遊ぶ気にはなれませんでした。
それから半年ほど経った頃でしょうか。その神社の本堂の床下から若い女性の遺体が見つかったのは。
神社の周りには大勢の人だかりができ、また、普段絶対に来ることのないテレビの撮影クルーも来ていました。
その時、地元の人が僕のことをテレビ局の人に話したのか、レポーターが僕にインタビューをしてきました。
「君は、神主さんに怒られたことがあるって聞いたんだけど、本当?」
「うん。友達とかくれんぼをしてたら、そこは入っちゃダメって」
そう言って、本堂の床下を指差した映像……これが、今現在タレントとしてテレビに出演している僕の、本当の意味でのデビュー映像です。
でも、さすがに、この話はテレビでは流せませんよね。
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