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映画監督のS氏が過去に経験した怖い話。

当時、スランプだったS氏は次回作のアイディアが全く浮かばず途方に暮れていました。そんなとき、自分宛てに届いた1通のファンレターが目に留まったのです。そして、その内容は以下のようなものでした。

「家を出て、最初に出会った子どもの後に付いていけば、貴方の映画は完成します」

なんだか、よくわからない内容でしたが、ものは試しと自宅を飛び出し近所の神社まで歩くと、自分をジッと見つめる子どもがいます。

そして、子どもの後を付いていくと、見知らぬアパートの1室に入っていきました。

さすがに中へ入るのに躊躇したS氏は、窓の隙間からその部屋を覗いてみました。そこには子供の姿はなく、バスローブを着た女性が髪をとかしていました。

すると、女性の背後から現れた刃物を持った黒い影が、彼女に襲いかかろうとしています。

犯行現場を目撃したS氏は慌てて警察に通報して、駆けつけた警官とともに部屋に突入しました。

しかし、部屋の中には誰もおらず、争った形跡もありませんでした。その後、S氏はスランプを脱し、新作は無事完成し大ヒットを記録しました。

ある日、そんなS氏のもとにファンからのプレゼントらしきものが届きました。何だろうと思い開けてみると、それは1枚のDVDでした。

さっそくDVDを再生してみると、そこには子どもの後をついていき、窓からアパートの中を覗くS氏の姿が映っていました。

「あのときのことは一部始終、全て撮られていたのか……。しかし、何のために?」

首をかしげるS氏でしたが、悪質なイタズラとも思えないので、そのまま放置することに。

何よりも、ファンレターのおかげかどうかはともかく、最終的にはスランプを脱し新作を撮ることができたのだから、と。

数日後、S氏に警察から1本の電話がかかってきました。

「はい、Sですが」

「こちら●●警察ですが、実は例のアパートを改めて調べたところ、床下から女性の腐乱死体が出てきたんですよ。目撃したときの様子をもう一度聞かせてもらえませんかね?」

あのファンレターは一体、何を示唆していたのだろうか。
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