全国に多数ある心霊スポット。その中でも特に有名なのが、福岡にある「犬鳴峠」だ。
テレビや雑誌で紹介されることも多くご存じの人も多いだろう。そんな犬鳴峠には、現在も使われている新トンネルと、もう閉鎖されてしまった旧トンネルがある。
二年前、テレビの心霊特番で犬鳴峠を取り上げる事になった。
そこで構成作家の私とディレクターは、犬鳴峠で実際に起きた心霊現象を集めるべく、地元の人たちを取材して回っていた。
その中で一番よく聞いたのが、「新トンネルには白い軽自動車で入ってはいけない」という興味深い噂だった。
何やら、白い軽で入ると必ず幽霊を見るらしいのだ。それを詳しく知る30代の男がこう話してくれた。
当時19歳だった彼は彼女と肝試しをしようと、深夜の新トンネルに白い軽で入った。
もちろん噂を知っていながら、だ。トンネルを入ってすぐ、2人同時に耳鳴りがしたという。
偶然だとしても怖い……と思いながらトンネルの中央に差し掛かったところで、彼女が「足をつかまれてる」と急に泣き出した。
足下を見ても掴んでいる手などなかったが、あまりに泣き叫ぶので急いでトンネルを抜けた。
そして彼女のジーパンをめくり足首を見てみると、クッキリと手形がついていたという。このような話をうけて、私とディレクターは「じゃあ白い軽で走ってみよう」と実行にうつした。
ディレクターは運転、私は助手席でデジカメを回していた。いざトンネルに入ると、まず驚いたのはその雰囲気。台風前のモヤモヤした空気を何倍にもしたような、何とも言えない気持ち悪さだった。
そしてトンネルの真ん中辺りに差し掛かったところで異変は起き始めた。
「今……耳鳴りしたよな?」
驚いた。
我々2人とも同じタイミングで耳鳴りがしたのだ。
あの男に聞いた話と同じじゃないか。
と盛り上がっていると今度は、
「キュッ、キュッキュッ、キュッキュッキュッ」
と、まるでテーブルを拭いているかのような音が不規則に鳴り始めた。
ブレーキをかけている音ではない。
「これ、心霊現象じゃないのか?」
私は無我夢中になってデジカメで周囲を撮り続けた。
幽霊の姿をとらえるためだ。
そしてトンネルを出てすぐのところで車を停車させ、録画した映像をチェックした。だが、そこには何も映っていなかった。
聞こえたあの不可思議な音もマイクに入っていなかった。確かに聞こえていたのに何故……。
残念に思っていると、車のリアガラスが異様に曇っていることに気づいた。フロントガラスやドアガラスはまったく曇っていないのに。
車を出てリアガラスを凝視した私とディレクターは言葉を失った。曇りの正体は、無数の手形だったのだ。
ハッキリと指紋まで見てとれるモノもあった。まるで車を引きとめようとしたかのように、伸びてこびりついている手形。
「まさか……」
私は試しに自分の指をガラスに擦ってみた。
「……キュッ」
トンネルで聞こえた音とまったく同じだった。
さすがに血の気が引いた。
正直な話、これまで取材してきた心霊スポットは嘘くさいモノばかりだったが、「ここは本当の心霊スポットだ」と確信できた。
私が何を言いたいか――。
「犬鳴峠」
だけは、ミーハー気分で行くのは止めておけ。
ということ。
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テレビや雑誌で紹介されることも多くご存じの人も多いだろう。そんな犬鳴峠には、現在も使われている新トンネルと、もう閉鎖されてしまった旧トンネルがある。
二年前、テレビの心霊特番で犬鳴峠を取り上げる事になった。
そこで構成作家の私とディレクターは、犬鳴峠で実際に起きた心霊現象を集めるべく、地元の人たちを取材して回っていた。
その中で一番よく聞いたのが、「新トンネルには白い軽自動車で入ってはいけない」という興味深い噂だった。
何やら、白い軽で入ると必ず幽霊を見るらしいのだ。それを詳しく知る30代の男がこう話してくれた。
当時19歳だった彼は彼女と肝試しをしようと、深夜の新トンネルに白い軽で入った。
もちろん噂を知っていながら、だ。トンネルを入ってすぐ、2人同時に耳鳴りがしたという。
偶然だとしても怖い……と思いながらトンネルの中央に差し掛かったところで、彼女が「足をつかまれてる」と急に泣き出した。
足下を見ても掴んでいる手などなかったが、あまりに泣き叫ぶので急いでトンネルを抜けた。
そして彼女のジーパンをめくり足首を見てみると、クッキリと手形がついていたという。このような話をうけて、私とディレクターは「じゃあ白い軽で走ってみよう」と実行にうつした。
ディレクターは運転、私は助手席でデジカメを回していた。いざトンネルに入ると、まず驚いたのはその雰囲気。台風前のモヤモヤした空気を何倍にもしたような、何とも言えない気持ち悪さだった。
そしてトンネルの真ん中辺りに差し掛かったところで異変は起き始めた。
「今……耳鳴りしたよな?」
驚いた。
我々2人とも同じタイミングで耳鳴りがしたのだ。
あの男に聞いた話と同じじゃないか。
と盛り上がっていると今度は、
「キュッ、キュッキュッ、キュッキュッキュッ」
と、まるでテーブルを拭いているかのような音が不規則に鳴り始めた。
ブレーキをかけている音ではない。
「これ、心霊現象じゃないのか?」
私は無我夢中になってデジカメで周囲を撮り続けた。
幽霊の姿をとらえるためだ。
そしてトンネルを出てすぐのところで車を停車させ、録画した映像をチェックした。だが、そこには何も映っていなかった。
聞こえたあの不可思議な音もマイクに入っていなかった。確かに聞こえていたのに何故……。
残念に思っていると、車のリアガラスが異様に曇っていることに気づいた。フロントガラスやドアガラスはまったく曇っていないのに。
車を出てリアガラスを凝視した私とディレクターは言葉を失った。曇りの正体は、無数の手形だったのだ。
ハッキリと指紋まで見てとれるモノもあった。まるで車を引きとめようとしたかのように、伸びてこびりついている手形。
「まさか……」
私は試しに自分の指をガラスに擦ってみた。
「……キュッ」
トンネルで聞こえた音とまったく同じだった。
さすがに血の気が引いた。
正直な話、これまで取材してきた心霊スポットは嘘くさいモノばかりだったが、「ここは本当の心霊スポットだ」と確信できた。
私が何を言いたいか――。
「犬鳴峠」
だけは、ミーハー気分で行くのは止めておけ。
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