知り合いに霊感はあるがお笑いのセンスがないという芸人がいた。そいつは今では芸人をやめて実家の九州に帰ってしまったのだが、そんな彼からイヤな話を聞いてしまったのだ。
「おれ、もう東京にしばらく来ないんで、ずっと黙ってた事、言っちゃいますね」
軽いノリでそう言った彼の話は、こういうものだった。霊感がある彼は、小さい頃から幽霊のたぐいをしばしば見ることがあった。
小さい頃によく見たのがオカッパ頭の子供の霊。いつも家の中で毬をついて遊んでいる姿を夜中に見かけた。
何をしてくるでもないが、ぼうっと闇夜に浮かぶその姿に恐怖を覚えていた。大きくなるにつれ、いつしか見なくなったという。
また、九州の田舎ではつぶれたラブホテルや自殺の多い吊り橋など肝試しに連れられて行った際には、そこで霊を見たりしていた。
芸人を目指すだけあってか肝は座ったもので、いつしかちょっとした霊では驚かなくなってきていた。
そんな彼が田舎の九州から東京に出てきて度肝を抜かれたのが、渋谷のスクランブル交差点だった。
信号が青に変わるたびに、ものすごい数の人たちが一斉に思い思いの方向に歩きだすあの巨大交差点。
しかし、彼が驚いたのは「人の多さ」ではなく、そこにいる「霊の多さ」だった。霊感のある人ならわかるというのだが、あのスクランブル交差点にはものすごい数の霊がいるという。
たくさんの人にまぎれて霊もスクランブル交差点を行ったり来たりしているのだ。
普通の人は、1人1人の顔などキチンと見て歩いてはいないので気づく事はないが、霊感のある人間なら感じ取ってしまうので、良く見ると霊が素知らぬふりをして人間に混じってスクランブル交差点を渡っている姿を見かけてしまうという。
その芸人は「東京は恐ろしい所だ」と、渋谷のスクランブル交差点にいる多数の霊を見て感じたという。
二度と近づきたくはなかったのだが、残念なことにお笑いライブの劇場が渋谷にあったため、上京して以来何度もそのスクランブル交差点を渡ることとなった。
どうやら、人が集まる場所に霊たちも集まってくるようで、そこで見かける霊にはさまざまな種類の霊がいるという。ある日、休日でごったがえすスクランブル交差点を渡っている時のこと。
その芸人は一瞬で気がついてしまった。ミュージシャンの最新アルバムのリリースを知らせる巨大モニター。ふと目をやると、その上に“何者”かが座っている……。
そんな所に座る人間など誰もいないので、すぐにこの世のものではない事がわかった。その途端、ハッと息をのんだ芸人の耳元で、あれだけ遠くにいるはずの霊の声がささやいた。
「……よくわかったな」
彼は真っ青になって、目を合わすことなくスクランブル交差点を渡りきったのだとか。その霊は今でもたまにモニターの上に腰掛けている事があるらしく、目を合わせるとなんだかんだと話しかけてくるのだそう。
また、さまよってる霊は存在に気がついてもらうと嬉しいらしく寄ってくるのだという。その芸人も霊感があるため、たびたび霊と目が合ってしまいついてこられることも多々あった。
時には、スクランブル交差点からついてきた霊とともに舞台でネタをしたこともあったそうだ。そんな彼が遭遇した中で一番印象的だった霊がいるという。
上京してから数年たち、スクランブル交差点に慣れた彼は霊と目が合わないように下を向いて歩いていた。
ちょうど駅からセンター街に向かって渡りきったとき下を向いていた彼の目線に入ってくる子供がいた。
その子供は和服にオカッパ頭で毬をついていた。小さい頃、実家でよく見ていたあの子供の霊だったのだ。
それがスクランブル交差点であの頃と同じ格好で同じように毬をついていたのだ。驚いた芸人が足を止めると、そのオカッパの子供はすごい形相で彼をにらみつけ、子供とは思えない低い声で言った。
「なんで、おまえ、ここにおるんじゃ?」
彼の地元の方言を使うオカッパの子供の霊。さらに、殺さんばかりの形相でにらみつけて来た。
なぜそこにいたのか? その疑問は解消できぬまま、慌ててその場を逃げ出したという。
今までの話を彼は田舎に帰るその直前まで黙っていたという。なぜなら、この話を聞いた人が渋谷のスクランブル交差点を渡りたくなくなるから。
「まあ、霊感がなかったら気づかないから大丈夫ッスよ」
そう言い残して彼は田舎に帰っていった。
多くの人が行き交うあのスクランブル交差点。知らず知らずのうちに何体もの霊とすれ違っているのかもしれません。
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「おれ、もう東京にしばらく来ないんで、ずっと黙ってた事、言っちゃいますね」
軽いノリでそう言った彼の話は、こういうものだった。霊感がある彼は、小さい頃から幽霊のたぐいをしばしば見ることがあった。
小さい頃によく見たのがオカッパ頭の子供の霊。いつも家の中で毬をついて遊んでいる姿を夜中に見かけた。
何をしてくるでもないが、ぼうっと闇夜に浮かぶその姿に恐怖を覚えていた。大きくなるにつれ、いつしか見なくなったという。
また、九州の田舎ではつぶれたラブホテルや自殺の多い吊り橋など肝試しに連れられて行った際には、そこで霊を見たりしていた。
芸人を目指すだけあってか肝は座ったもので、いつしかちょっとした霊では驚かなくなってきていた。
そんな彼が田舎の九州から東京に出てきて度肝を抜かれたのが、渋谷のスクランブル交差点だった。
信号が青に変わるたびに、ものすごい数の人たちが一斉に思い思いの方向に歩きだすあの巨大交差点。
しかし、彼が驚いたのは「人の多さ」ではなく、そこにいる「霊の多さ」だった。霊感のある人ならわかるというのだが、あのスクランブル交差点にはものすごい数の霊がいるという。
たくさんの人にまぎれて霊もスクランブル交差点を行ったり来たりしているのだ。
普通の人は、1人1人の顔などキチンと見て歩いてはいないので気づく事はないが、霊感のある人間なら感じ取ってしまうので、良く見ると霊が素知らぬふりをして人間に混じってスクランブル交差点を渡っている姿を見かけてしまうという。
その芸人は「東京は恐ろしい所だ」と、渋谷のスクランブル交差点にいる多数の霊を見て感じたという。
二度と近づきたくはなかったのだが、残念なことにお笑いライブの劇場が渋谷にあったため、上京して以来何度もそのスクランブル交差点を渡ることとなった。
どうやら、人が集まる場所に霊たちも集まってくるようで、そこで見かける霊にはさまざまな種類の霊がいるという。ある日、休日でごったがえすスクランブル交差点を渡っている時のこと。
その芸人は一瞬で気がついてしまった。ミュージシャンの最新アルバムのリリースを知らせる巨大モニター。ふと目をやると、その上に“何者”かが座っている……。
そんな所に座る人間など誰もいないので、すぐにこの世のものではない事がわかった。その途端、ハッと息をのんだ芸人の耳元で、あれだけ遠くにいるはずの霊の声がささやいた。
「……よくわかったな」
彼は真っ青になって、目を合わすことなくスクランブル交差点を渡りきったのだとか。その霊は今でもたまにモニターの上に腰掛けている事があるらしく、目を合わせるとなんだかんだと話しかけてくるのだそう。
また、さまよってる霊は存在に気がついてもらうと嬉しいらしく寄ってくるのだという。その芸人も霊感があるため、たびたび霊と目が合ってしまいついてこられることも多々あった。
時には、スクランブル交差点からついてきた霊とともに舞台でネタをしたこともあったそうだ。そんな彼が遭遇した中で一番印象的だった霊がいるという。
上京してから数年たち、スクランブル交差点に慣れた彼は霊と目が合わないように下を向いて歩いていた。
ちょうど駅からセンター街に向かって渡りきったとき下を向いていた彼の目線に入ってくる子供がいた。
その子供は和服にオカッパ頭で毬をついていた。小さい頃、実家でよく見ていたあの子供の霊だったのだ。
それがスクランブル交差点であの頃と同じ格好で同じように毬をついていたのだ。驚いた芸人が足を止めると、そのオカッパの子供はすごい形相で彼をにらみつけ、子供とは思えない低い声で言った。
「なんで、おまえ、ここにおるんじゃ?」
彼の地元の方言を使うオカッパの子供の霊。さらに、殺さんばかりの形相でにらみつけて来た。
なぜそこにいたのか? その疑問は解消できぬまま、慌ててその場を逃げ出したという。
今までの話を彼は田舎に帰るその直前まで黙っていたという。なぜなら、この話を聞いた人が渋谷のスクランブル交差点を渡りたくなくなるから。
「まあ、霊感がなかったら気づかないから大丈夫ッスよ」
そう言い残して彼は田舎に帰っていった。
多くの人が行き交うあのスクランブル交差点。知らず知らずのうちに何体もの霊とすれ違っているのかもしれません。
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