お金のない若手芸人は、ネタの練習をする場所もままなりません。漫才やコントの練習は大声を出すので、住んでいるアパートでやれば隣人から怒られますし、かといって稽古場やカラオケを使えるほどお金に余裕もありません。

そこで若手芸人たちがよく使うのが、公園です。今の売れっ子芸人たちも昔は公園で練習をしていた人は多いと聞きます。

これは、若手芸人Ａさんが体験した奇妙な出来事です。10年前、Ａさんはコンビの相方と一緒に四畳半のボロアパートに住んでいました。

最初は近所の駐車場を使ってネタ合わせをしていたそうですが、「うるさい！」と近隣の住人からクレームが入り使えなくなってしまったそうです。

家の近くで別な場所を探してみましたが良さそうな場所は見つからず、仕方なく自転車で20分かかる遠くの公園で今後は練習することにしたそうです。

しかし自転車は一台しかなく、いつも二人乗りで行っていました。その公園は大通り沿いにあって、周りに民家も少ないし車の騒音もうるさい場所だったので、どれだけ大声を出しても大丈夫でした。

都心の公園と違ってホームレスもいないのも大きな利点でした。

……余談ですが、新宿あたりの公園で芸人がネタ合わせをしていると、ホームレスに怒鳴られたり、ときには「一発ギャグやってよ」と無茶ブリされることもあるそうです。

中には「兄ちゃん、ツッコミが甘い」とダメ出ししてくる元・芸人のホームレスもいると聞きました。売れないからホームレスになった人に言われても説得力はゼロな気がしますが……。

話を戻しましょう。冬のある日。一通り練習を終えたタイミングでＡさんは下痢気味になってしまい、帰る前に用を足そうと公園の公衆便所に駆け込みました。

しかし便をすませてレバーをひねっても、うまく水が流れずに詰まってしまったそうです。

「そんなに大きいのはしてないのに……」と思いながらも、しょうがないのでそのままにして帰ることにしたそうです。

Ａさんはいつものように自転車の後ろに相方をのせて二人乗りで家に向かい始めました。走り出して間もなく、Ａさんは足をトントンと蹴られる感覚がしたそうです。

後ろの相方に「いま蹴った？」と聞いても「蹴ってねえよ」と不思議顔。「おかしいな」と思った瞬間、Ａさんのポケベルが鳴りました。

ワタシノアシダヨ

「どういう意味だよ……」差出人も分からない妙なメッセージにＡさんは気持ち悪さを覚えました。そして帰ってからも変な寒気が一晩治まらなかったそうです。

後日。Ａさんが大便をした便器の奥からビニール袋に入った女性の足が見つかりました。そう、あの公衆便所はバラバラ死体の隠し場所に使われていたのです。

あろうことかＡさんはその上に大便を……。
流れなかった訳が分かりました。

「ワタシノアシダヨ」

それは殺された女性がＡさんに気付いて欲しくて送ったメッセージだったのか。それとも大便をかけられた怒りのメッセージだったのか。
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