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テレビやラジオには放送事故というものがある。その原因は、放送機器のトラブルや人為的ミスなど様々だ。それとは別に放送中に起きた事故というものもある。

生放送中に人が倒れたり怪我をしたりといったもので、大概の場合、司会者が上手く捌いてごまかしたり画面を切り替えたりでしのげる事が多い。

これは、ある放送中に起きた最悪の事故の話である。

僕が業界に入って間もない頃、仲良くさせてもらっていたディレクターにいつも業界の裏話を聞いていた。

性格の悪いタレントや、誰と誰が付き合ってるなど噂話も交えながらワイワイしゃべっていた。

ある時、放送事故の話題になった。

どの話もすごい話で、例えばアニメやドラマの同じ回を放送したり、ニュース番組の冒頭に「笑点」の曲が流れたり、ある男性職員が局で海外のアダルトビデオを見ていたらその映像がその地域に放送されていたなど、信じられない様な話ばかりだった。

するとディレクターが放送中に起きた事故の話をしはじめた。

「放送中の事故で有名なのが『8時だよ! 全員集合!』の生放送中にセットから火が出たとか、オープニングから停電になったとか、これはバラエティー番組で今も流して、見て、笑う事できるけど、笑えなくて完全に封印された事故があるんだよ」と、さっきまでキャッキャいってたのが一転、急にまじめなトーンになった。

昔、夕方に○○さんがやってた生放送の番組に1通の手紙が来て、それをスタッフが○○さんにみせたら「これ、おもしろいから番組の企画でやろうよ」という事になった。

その手紙の内容というのが「怖いから助けてください」というものだった。手紙の送り主は20代の男性。

突然、家に封筒が届いて開けると自分の全身写真だった。よく見ると足の部分に線が入っていて、写真の隅にはある日にちと時間が書かれていた。

そしてその書かれていた日時に足を骨折したのだという。さらに別の日に届いた写真には腕の部分に線が入っていて、やはりその日時に転んで腕を折ったという。

その男性がなぜその番組に助けを求めたかというと、またさらに写真が送られて来たのだ。その写真には首の所に線が入っていた。

今度こそ殺されてしまうと思った男性は、写真に書かれた日時にちょうど生放送をしているこの番組に出演させてくれ!と頼んだのだ。テレビに出演して大勢の人に見られていれば首を折ることなんてないと考えたのだ。

それを聞いた○○さんは、どうせ嘘だろうけどなんとなくバカバカしくて面白くなるんじゃないかということでOKしたのだ。

そして、その当日。男性はスタジオに招待され、レギュラーメンバーと並んで出演者として番組に出る段取りだった。

いつもの時間に生放送はスタートし、男性が登場した。そして例の時刻になった瞬間、突然スタジオの天井に取り付けられた照明が落下して男性を直撃したのだ。

男性は首の骨を折って死亡。もちろん生放送中の番組は急遽画面を「しばらくお待ちください」という緊急用に切り替え、放送はそのまま終了した。番組もすぐに打ち切りとなった。

その話を聞いた僕は、未だにスタジオの照明が怖くて怯えながら仕事をしている。
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