若手芸人のライブを企画構成している関係で、まだ全然テレビには出ていないが、なかなかの逸材である芸人を数多く知っている僕。
その中でも、コイツそろそろ世に出るんじゃないかなぁと思うのが、ピン芸人のT君だ。
T君の芸はなかなかにシュールで、マニアックながらウマいところを突いてくる。どちらかと言うとインテリ系だが、天然系の部分も持ち合わせており、何に対しても真っ直ぐで純真な奴。
そんなT君から、ある日、ゾッとする話を聞かされた。
センスはそこそこにあるが、まだまだ売れていない芸人のT君は、バイトで生計を立て、食事と言えば大体コンビニ弁当。
T君はいつも、バイトが終わると、家の近所のコンビニに寄って弁当を買い、ちょっと余裕がある時は、食後のデザートとしてシュークリームを買って帰るというのが、お決まりのパターンだった。
その日、ちょっと余裕があったT君は、弁当とお茶、シュークリームをレジに持って行き、会計を済ませたところ、女性店員から1枚のメモを渡された。
店を出てメモを見てみると、その店員のものらしいメールアドレスが書かれていたのだが、T君は正直、その店員に何の興味もなかったので、彼女に悟られないよう、燃えるゴミのゴミ箱の中にそっとメモを捨てて帰った。
「だって、その子、地味目で全然タイプじゃなかったし、変に連絡して気を持たせる方が悪いじゃないですか」
というT君。その気持ちはよくわかるし、僕でもそうしたと思う。
その後、さすがにそのコンビニに行き辛くなったT君は、次の日から別のコンビニに寄って弁当を買うことにしたのだが、家に帰ってきた彼は驚いた。
玄関の隙間に何かが挟まっていたので、見てみると、それは、昨日T君がゴミ箱に捨てたコンビニ店員のメモだったのだ。
クシャッとなったその紙は紛れもなく、あの店員がゴミ箱の中から取り出し、自分の家に届けたもの。
「やっべぇ……家、知られてるよ」
T君は自分の家まで知られていることに怖くなったが、どうすることも出来ず、とりあえず弁当を食べて、その日はそのまま寝た。
そして、次の日、またまた別のコンビニで弁当を買って帰ってきたT君は、玄関に何かがぶら下がっているのを発見した。
何だろう?と見てみると、それはコンビニ袋に入ったシュークリーム。
そして、そこには
「よかったら食べて下さい。連絡待ってますね」
と書かれたメモも添えられてあった。
「あの女だ!」
送り主に察しがついたT君はますます怖くなり、背筋が凍ったのだが……食欲に負けてシュークリームだけは食べたそうだ。
食うなよ! って感じだが。
その夜……。
このままここに居たらマズいんじゃないかと思ったT君は、次の日から友人の家を転々と泊まり歩き、1週間ほど家を空けた。
そして、1週間後、自宅に帰ってきたT君は「やっぱりな……」と愕然とした。
玄関には1週間分のシュークリームがぶら下がっており、この時は夏場だったため、大量のハエがたかっていたのだ。
「うげぇ……もったいねぇ」と思いながらシュークリームを処理したT君は、このままではいけない!と意を決し、女性店員のいるコンビニに乗り込んだ。
「あのさ、気持ちは大変有り難いけど、あなたの気持ちには応えられないから」
店員に真っ直ぐそう訴え、店を後にしたT君。そう、彼は真っ直ぐで純真な奴なのだ。そんなT君の訴えを受け入れたのか、次の日から彼女のシュークリーム攻撃は止まった。
「あぁ、よかった」と安心したT君は、これまでと同じようにバイトに精を出し、ネタを考え、ライブにも出演した。ただ、例のコンビニにはもう行かなくなったのだが……。
そんなこんなで、2ヶ月ほど経ったある日、T君の家のチャイムが鳴った。「はい」と玄関を開けてみると、そこには、あの女性店員が立っていた。
「こんにちは。隣りに越して来ましたので、よろしくお願いします」
そう言って、彼女は、コンビニ袋いっぱいに詰まったシュークリームを差し出した。
「怖っ! その後どうしたの?」と聞く僕に「いや……それが」と、T君が声を詰まらせた。
これはもしかして、その女が隣りの部屋で首吊って死んだとかいうオチかなと思っていたら、それ以上に怖い答えが返ってきた。
「今、付き合ってるんですよね。その子と」
最初は怖いと思っていたけど、あまりに真っ直ぐに自分のことを想ってくれる彼女がだんだん愛おしくなってきて……と語るT君。
その純真すぎる心が、ある意味怖いと、僕は思った。
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その中でも、コイツそろそろ世に出るんじゃないかなぁと思うのが、ピン芸人のT君だ。
T君の芸はなかなかにシュールで、マニアックながらウマいところを突いてくる。どちらかと言うとインテリ系だが、天然系の部分も持ち合わせており、何に対しても真っ直ぐで純真な奴。
そんなT君から、ある日、ゾッとする話を聞かされた。
センスはそこそこにあるが、まだまだ売れていない芸人のT君は、バイトで生計を立て、食事と言えば大体コンビニ弁当。
T君はいつも、バイトが終わると、家の近所のコンビニに寄って弁当を買い、ちょっと余裕がある時は、食後のデザートとしてシュークリームを買って帰るというのが、お決まりのパターンだった。
その日、ちょっと余裕があったT君は、弁当とお茶、シュークリームをレジに持って行き、会計を済ませたところ、女性店員から1枚のメモを渡された。
店を出てメモを見てみると、その店員のものらしいメールアドレスが書かれていたのだが、T君は正直、その店員に何の興味もなかったので、彼女に悟られないよう、燃えるゴミのゴミ箱の中にそっとメモを捨てて帰った。
「だって、その子、地味目で全然タイプじゃなかったし、変に連絡して気を持たせる方が悪いじゃないですか」
というT君。その気持ちはよくわかるし、僕でもそうしたと思う。
その後、さすがにそのコンビニに行き辛くなったT君は、次の日から別のコンビニに寄って弁当を買うことにしたのだが、家に帰ってきた彼は驚いた。
玄関の隙間に何かが挟まっていたので、見てみると、それは、昨日T君がゴミ箱に捨てたコンビニ店員のメモだったのだ。
クシャッとなったその紙は紛れもなく、あの店員がゴミ箱の中から取り出し、自分の家に届けたもの。
「やっべぇ……家、知られてるよ」
T君は自分の家まで知られていることに怖くなったが、どうすることも出来ず、とりあえず弁当を食べて、その日はそのまま寝た。
そして、次の日、またまた別のコンビニで弁当を買って帰ってきたT君は、玄関に何かがぶら下がっているのを発見した。
何だろう?と見てみると、それはコンビニ袋に入ったシュークリーム。
そして、そこには
「よかったら食べて下さい。連絡待ってますね」
と書かれたメモも添えられてあった。
「あの女だ!」
送り主に察しがついたT君はますます怖くなり、背筋が凍ったのだが……食欲に負けてシュークリームだけは食べたそうだ。
食うなよ! って感じだが。
その夜……。
このままここに居たらマズいんじゃないかと思ったT君は、次の日から友人の家を転々と泊まり歩き、1週間ほど家を空けた。
そして、1週間後、自宅に帰ってきたT君は「やっぱりな……」と愕然とした。
玄関には1週間分のシュークリームがぶら下がっており、この時は夏場だったため、大量のハエがたかっていたのだ。
「うげぇ……もったいねぇ」と思いながらシュークリームを処理したT君は、このままではいけない!と意を決し、女性店員のいるコンビニに乗り込んだ。
「あのさ、気持ちは大変有り難いけど、あなたの気持ちには応えられないから」
店員に真っ直ぐそう訴え、店を後にしたT君。そう、彼は真っ直ぐで純真な奴なのだ。そんなT君の訴えを受け入れたのか、次の日から彼女のシュークリーム攻撃は止まった。
「あぁ、よかった」と安心したT君は、これまでと同じようにバイトに精を出し、ネタを考え、ライブにも出演した。ただ、例のコンビニにはもう行かなくなったのだが……。
そんなこんなで、2ヶ月ほど経ったある日、T君の家のチャイムが鳴った。「はい」と玄関を開けてみると、そこには、あの女性店員が立っていた。
「こんにちは。隣りに越して来ましたので、よろしくお願いします」
そう言って、彼女は、コンビニ袋いっぱいに詰まったシュークリームを差し出した。
「怖っ! その後どうしたの?」と聞く僕に「いや……それが」と、T君が声を詰まらせた。
これはもしかして、その女が隣りの部屋で首吊って死んだとかいうオチかなと思っていたら、それ以上に怖い答えが返ってきた。
「今、付き合ってるんですよね。その子と」
最初は怖いと思っていたけど、あまりに真っ直ぐに自分のことを想ってくれる彼女がだんだん愛おしくなってきて……と語るT君。
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