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グラビアアイドルと結婚したディレクター。放送作家の私とそのディレクターは、古くからの知り合いです。

私が駆け出しの作家で、彼もまた新人ADだった頃に同じ番組を担当していて、それからは半年に一度ほど、近況報告をかねてご飯に行ったりしていました。

ですが、そんな彼がまさかグラビアアイドルと結婚するなんて、それを告げられた時は嬉しさ半分、悔しさ半分でした。

これは、その結婚式で経験した身の毛もよだつ話です。ここでは彼の名前を仮に「田中」とします。

式当日。
超一流ホテルの会場には、テレビ局の上層部や芸能事務所のお偉い方、そして人気芸能人たちが多く顔を揃えていました。

そして芸能人を取り囲むマスコミの面々。
さらに式中には多数のお祝いコメントVTRがスクリーンに流され、その中にはテレビのゴールデン番組で司会を張るような超大御所タレント、何度もミリオンヒットを飛ばしたカリスマミュージシャンの姿もありました。

まさにTHE・芸能界とはこのコトだと、私も業界の一員ながら、その華やかな光景に「すごいな~」とため息をついてしまうほどでした。

歓談タイムを利用して、私は新郎の田中に酒を注ぎにいき、「結婚おめでとう。こんなに偉い人たちに祝われたら浮気できないな」と少しからかいました。

すると田中は「当たり前だろバカ。ありがとな、幸せになるよ」と笑って返してくれました。

そんなこんなで式も後半に差し掛かったところで、新婦の友人代表からのお祝いスピーチタイムに突入しました。

スピーチするのは、新婦が所属する事務所の後輩アイドル。普通は地元の親友などがするものですが、業界人が集まる芸能界の結婚式においては、お祝いスピーチがプロモーションの場として使われることもしばしばなのです。

壇上に上がり、スピーチを始める後輩アイドル。

「新郎の田中さん、新婦の○○さん、ご結婚おめでとうございます。私が新婦の○○さんと出会ったのは、番組のオーディション現場でした。

オーディションで上手く話せずに落ち込んでいる私を○○さんは優しく励ましてくれました……」

と、イイ感じの出だし。
しかし状況は一変します。

「……そして新郎の田中さんと出会ったのは、とある合コンでした。酒に酔った私を、田中さんは自宅マンションへと持ち帰りました……」

会場の空気が一気にピンと張りつめました。
さらに後輩アイドルは続けます。

「そのまま私は新郎の田中さんと体の関係を持ちました。それから一年間、何度も会ってはセックスをし、その度、田中さんは私に“愛してる”と言葉をくれました」

会場はざわつき始め、田中は下を向き額には大量の汗をかいていました。そう、この後輩アイドル、実は田中の過去のセックスフレンドだったのです。

「遊ぶだけ遊んで、私をゴミのように捨てた田中さん。いつまでもお幸せに」

彼女はそうスピーチを締めくくると、マイクを田中に投げつけ、泣きながら式場を去っていきました。

水を打ったように静まりかえった会場に、「キィィィン」というマイクのハウリング音だけが響いていました。

その後、式は続けられましたが、新郎新婦の顔から笑顔は消え去り、一度も目を合わせることはありませんでした。まさに最悪の結婚式です。

そして式から3日後、彼らは離婚。この一件で田中の悪名は広まり、テレビの仕事は激減。今は地元に帰り、土木作業をしながら貧乏生活を送っていると聞きました。
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