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テレビ局のADは今も昔も変わらず辛い仕事です。女である私が現在5年も続けられているのは、いつかは一流ディレクターになって良質のドキュメンタリーを撮りたい、という夢があるからです。

男性が多い業界なので、正直、セクハラも多いです。初めのころはそれが嫌で嫌で仕方なかったのですが、それも目が回るほどの忙しさの中で、どうでもよくなってきちゃいます。

あと、これはあんまり言いたくないのですが過労死した知り合いADもいます。デスクにうつぶせになり仮眠していると思ったら、死んでいたのです。

それは極端な例ですが、とにかくADの仕事は過酷なのです。さらに新人ADの時期なんてもう恐ろしいくらいで、すぐに辞めてしまう人ばかりなのです。

そういえば、こんなこともありました。うちの会社に新人で入ってきたTクンという二十歳の男の子がいました。

真面目で勉強熱心で、仕事を始めて3日目にはすでにディレクターの人たちから「コイツはできる!」と評判で期待のイツザイでした。

……が、入って4日目に突然、職場に姿を見せなくなったのです。彼に限って急にばっくれるコトなんてないだろう、と我々も困惑気味。

彼の携帯に電話しても、「この電話番号は現在使われておりません」というメッセージが流れるだけ。それから2日が経っても、会社には来ませんでした。

私はおかしいと思っていましたが、「残念だけど……ばっくれたな」というのがプロデューサーの見解でした。

そして数日後、会社のスタッフみんなでデスクで食事をしている時に、Tクンの話になりました。

すると一人の古株ディレクターがTクンの履歴書の顔写真をまじまじと見つめながら、つぶやきました。

「あれ、コイツって5年前にウチで働いてなかったけ?」

そんなはずはありません。だって、5年前だとTクンは15歳、まだ中学3年生ですから。しかし、他のスタッフから何名か「言われてみれば、名前も同じだし、顔も同じですね」という声が。

そして古株ディレクターは震えながらこう続けました。「でも、彼はもうこの世にいないはずだよ……」

そう、なんと彼はテレビの現場の理想と現実のギャップに失望して、5年前にスタジオで首を吊って自殺したというのです。

じゃあ、この前まで我々の前にいたTクンとは一体?全員が青白い顔で震える中、プロデューサーは「このことは一切口外無用」と、全てをなかったことにする決定を下しました。

亡くなったTクンが何を意図して、再び職場に現れたのかはわかりません。テレビの仕事に未練がまだ残っていたのでしょうか。

それとも、忙しさのあまり人間性を失ってしまいがちな我々に、警鐘を鳴らすために舞い戻ってきたのでしょうか。

私には、どうも後者のような気がしてならないのです。
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