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大物女優Kさんから聞いた話。

その日、Kさんはドラマの撮影現場に向かうためにマネージャーの運転するベンツの助手席に乗っていた。

2時間サスペンスドラマの撮影で、現場は山奥にある湖のほとりだった。

季節は夏まっさかり、山道をひた走るベンツの外からは蝉の鳴き声が多く聞こえていた。

「……ごめん、トイレしたくなっちゃった」

便意をもよおしたKさんがそう言うと、マネージャーはカーナビで周りのコンビニやガソリンスタンドを探した。

しかしそこはド田舎の山道で、すぐ近くにトイレが出来そうな場所は見当たらなかった。

「っと……イチバン近くで、あと30分走ったところにあるコンビニですね」

「本当に? 我慢できないんだけど。どうしよう……」

少し走った先で、マネージャーが何かを発見した様子でベンツを停車させた。

「あれって……公衆便所ですよね?」

山道脇に見つけたのは、ボックス型の簡易便所だった。公衆電話くらいの大きさで中には便器がひとつだけあるタイプのアレだ。

ドアには“男女兼用 便所”とマジックで走り書きされていた。見るからに昔から設置されている様子で外見はかなり汚れていて、おそらく中も汚いであろうことは容易に想像できた。

テレビドラマで主役を張るほど大物女優のKさんにとって、普段なら絶対入る機会はないであろう代物だ。しかしその時Kさんの便意はギリギリの所まできていた。

「ハハハ……。仕方ないよね……」

彼女は苦笑いをしながらベンツから降りて1人その簡易便所に向かった。ドアを開けた瞬間、すさまじい轟音が彼女の耳をつんざいた。

ジィ────────── !! !! !!

大量の蝉が、便所の壁や天井にビッシリと張り付いていたのだ。おそらく千匹以上の蝉が隙間なくひしめき合い、便所をドス黒く染めていたという。

それは不気味で恐ろしい光景だった。

天井近くに小さな換気扇がひとつあり、便所に入りこむのは可能だとしても、何故これほど大量の蝉が、この便所に集結しているのか……。

思わず後ずさりしてしまったKさんだが、とにかく便だけは済まそうとドアを閉めて和式便所にしゃがみこんだ。ドアを閉めると蝉の鳴き声はまるでエコーのように便所内にコダマした。

頭がおかしくなるほどの轟音だったという。指で耳を塞ぎながら便をしていると、ひしめき合う蝉の間から少し見えた壁のタイルに何やら文字が書かれているのを発見した。

よくある便所の落書きか……と気にとめなかったが、文字は壁一面たくさんに書かれている事に気付いた。天井にまで書いてある。

何が書いてあるかは覆いかぶさる蝉のせいでわからなかったが、それはまるで、その文字を隠すために大量の蝉が張りついているように見えた。

一体何が書いてあるんだろう……気になってしまったKさんは便を終えてトイレから出るとマネージャーを呼んだ。

そして便所の中の蝉を全て追い払って欲しいとお願いしたのだ。便所のドアを開けっ放しにして大きく揺さぶると、まるで蜂の巣をつついたように蝉達は外にドンドン飛び立っていった。

そして改めて中を見て見ると……。壁や天井にはマジックで箇条書きが羅列で並んでいた。

1979 8月×日 みよこ
1988 12月×日 けんた
1992 2月×日 よういちろう

謎の“日付”と“名前”の羅列で、Kさんとマネージャーにその意味はわからなかった。

その後、撮影現場で出会った地元民にその一部始終を伝えると、

「今すぐお祓いに行きなさい」

と血相を変えて言われてしまった。聞けば、Kさんが用を足した山道の簡易便所は地元で“自殺便所”と呼ばれる心霊スポットだという。

全国から自殺志願者がやってきてはその便所に

“日付”と“名前”を書いて自殺する……。

今では地元民は誰1人使うことはおろか、近づくこともないそうだ。

そして毎年夏になると、何故か大量の蝉が換気扇から入り込み、まるで次の自殺者を誘うように鳴き続けるのだという。
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