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これは数年前、私がある映画の助監督をしていたときの話です。その日の撮影現場は、地方の山深くにあるお寺でした。

そこは古来より続く山岳信仰の本山で、本堂は森に埋もれるようにして建ち、規模は小さいですが歴史を感じる重厚な佇まいでした。事件が起きたのは撮影三日目です。

スタッフの若い人たち数人が、面白半分で立ち入り禁止区域に入ってしまいました。そこは本堂の裏をまっすぐ奥に進み、杉小立に囲まれた細い道を抜けて、さらに石階段を上った先でした。

ロケハンのときご住職が口をすっぱくして「入らないでください」と諌めた場所です。見つかった彼らはこっぴどく叱られました。

住職のお説教は一時間にも及びました。どうやら彼らは本当にまずい所へ入ったようなのです。

私はようやく説教から解放された彼らのもとへ駆けより、たまらずこう訊きました。

森の奥に隠された立ち入り禁止区域、そこに何があったのか?と。すると彼らの中の一人が、まるで言葉に出すのもためらうかのように小声でこう呟きました。

「あそこ、丑刻参りの現場なんです」

丑刻参り。
それは他人に恨み辛みを持った人間が、丑刻(午前二時ごろ)に本堂裏の杉小立にやって来て、その恨んでる人間を模したわら人形を木の幹に釘で打ちつけ、相手に災いをもたらすという、いわば呪いの儀式です。

彼らは白装束に身を包み、必ず一人でやって来るそうです。

なぜ一人かというと、この呪いの儀式にはちょっとした制約があり、それは自分が釘を打っているところを他人に見られないこと。

もし見られたら、相手にかけた呪いがすべて自分に返ってきてしまうそうなのです。そしてそれを阻止する唯一の方法というのが……

「見た相手を殺すことです」

と、ご住職は言いました。

「だからです。だからあそこに入ってはいけないのです。時間は違うにしろ、万が一術者を見てしまうかもしれない。

そうなれば相手はどうすると思います? 
あなたたちが見たせいで、今度は自分に呪いがかかるのです。

どこまでも追いかけてそれを必死に止めようとするのが人情。つまり、殺されるということです」

それはたしかに恐ろしい話ですが少し現実味がありませんでした。すると、彼らが半信半疑でいるのを見てとったのか、ご住職は人の持つ恨み「生き霊」の恐ろしさをとくとくと説き始めました。

「さすがに殺されはしないだろうと思いますか? 私は決してそうは思いません。いいですか皆さん、考えてもみて下さい。夜中の二時にですよ、彼らはたった一人であの真っ暗な山道をやって来るんですよ。

あのあたりは大きな木が多いですから月明かりなんてありはしません。本当に真っ暗です。

私もここの留守を預かって長いですが、夜中に一人であの道を歩くなんて怖くてとてもできません。でも彼らはやるんです。

つまりそれほど相手が憎いのです。これはね、とんでもない怨念ですよ。そんな精神状態の人間がこの世に存在していること自体が恐ろしいことなのです」

私はご住職の言われる通りだと思いました。たしかに、そんな姿は想像するだけでぞっとします。

絶対に見たくない。一体どれほどの恨みだというのでしょうか。そして最後に、私はどうしても彼らに訊きたかったある質問を投げかけました。

私はその答えを予想はしていましたが、それでも実際に耳にしてみるとやはり怖かったです。

「わら人形ですか? そこらじゅうにありましたよ」

ご住職いわく、このご時世、数は年々増えているようです。
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