セクシーアイドルユニットの一員だったAさんは、結婚を機に芸能界の仕事からは遠ざかってしまったが、今はベビー服やマタニティウェアのデザインをしたりして、主婦雑誌などではよく取り上げられている。
私が彼女と出会ったのも、そんな主婦雑誌の取材の場だった。
Aさんには現在4歳の息子さんがいるのだが、自分が妊婦だった時にダサいマタニティウェアしか売ってなかったことや、息子が誕生した時に「これ着せたいな」と思うような服があまりなかったことから、今の仕事を始めようと思ったそうだ。
Aさんと私は同い年で地元も一緒だったため、初対面の時から意気投合し、その後、プライベートでも食事を共にする仲になった。
つい先日も、彼女の家の近くでランチでもしようという運びになり、昼間っからガールズトークで盛り上がってきたばかりなのだが、その時に聞いた不思議な話。
「私ね、子供の頃、嫌なことが起こる前には、必ず耳鳴りがしてたの」
そう話すAさんは、体育の時間に耳鳴りがしたと思ったら、友達のアキレス腱が切れたり、教室の中で耳鳴りがしたら、先生が脳梗塞で倒れてしまったり、ホームで耳鳴りがした時は隣に立ってたサラリーマンが線路に飛び込んだり……そんな事が多々あったと言うのだ。
その話を聞いて「うわぁ、嫌だぁ」と顔をしかめた私に、Aさんは続けて言った。
「でもね、それが、大人になった頃から様子が変わってきて、耳鳴りと同時に映像が浮かぶようになったの」
それは一体どういうことなのか? というと、例えば、耳鳴りがした時に友達の顔がパッと浮かび、続いて、その子の下腹部あたりに黒い塊が見えたりするらしい。
そんなものが突然目に飛び込んできたAさんは不安になって友達に電話し、聞いてみた。
「もしもし、○子? あのさぁ、変なこと聞くようだけど、最近、お腹の調子が悪かったり痛んだりすることない?」
何の前触れもなく、いきなり友達からこんなことを聞かれたらキョトンとしそうだが、その子はこう答えたそうだ。
「え?なんで、わかるの?そうそう、最近、下っ腹が張ってて痛くてさ……病院行こうかなって考えてたとこなんだけど」
この返答を聞いて、Aさんは即座に言った。
「ねえ、それ、急いで行って!今、時間があるんだったら、すぐにでも!」
Aさんは、その時、これは放っておいたらマズいかもと直感で思い、友達にそうアドバイスをしたところ、案の定、その子に卵巣嚢腫が見つかった。
幸い、嚢腫がまだそれほど大きくなかったため、手術もそんなに困難ではなかったようだが、発見が遅ければ、卵巣ごと摘出しなければならない大変な病気だ。
Aさんの直感に助けられた友達は心底感謝し、お礼の言葉を述べたそうだが、こういったことが、その後も度々起こったと言う。
Aさんは、この耳鳴りと共にフッと頭に映像が浮かぶ現象を“耳鳴り予報”と名付け、これが起こると、そこから先の事態を予想して、友人知人に助言をしていたらしい。
例えば、誰かと会う約束をしている日に耳鳴りがして、壊れた自転車の映像が浮かんだ時は、その人物に「今日は絶対、自転車に乗らずに来て」と命じるなど、そんな具合だ。
そして、ここからがまた不思議な話なのだが、その人物が言う通りにして無事に1日を過ごすことができた場合、後日必ずAさんの身に良いことが起こるそうだ。
それはまるで、Aさんの予想が当たっていて、そこから世のため人のためになるような結果を導き出せたことへの対価のようだった。
こんな不思議な力を持つようになったAさんが、最近、耳鳴り予報を的中させたのは、2週間前のこと。
その日、耳鳴りと共に頭に浮かんだのは、なぜかヤクルトだった。
え?ヤクルト? ……確かに、Aさんの子供はヤクルトを飲むが、大好物というわけでもないし、一応、飲みたいかどうか子供に聞いてみたところ「別に」と言う。
う~ん、何なんだろうなぁ?と疑問に思いながら、夕食の材料を買いに行こうと家を出たところで「あっ!」と声を上げた。
その日は、Aさんの斜め向かいの家で法事が行われていたのだが、そこの家では3年前小さな男の子が亡くなっていた。
男の子は当時2歳で、生きていればAさんの子供の1つ上の年齢だ。
Aさんは「そうか、この子だったんだ」とつぶやき、スーパーで食材を買うついでに5本入りのヤクルトを買って帰ってきた。
そして、それを斜め向かいの家の奥さんに託した。
「あの……差し出がましいようなんですけど、これ、よかったらお供えして頂けませんか?」
そう言ってヤクルトを手渡すと、奥さんは目に涙を浮かべながら
「あ……ありがとうございます! あの子、ヤクルト大好きだったんです。
果物やお菓子は用意してあったんですが、今日は朝から法事の準備に追われて、これだけ、まだ供えてやれなかったんです」
と、ヤクルトを本当に有り難そうに受け取ったそうだ。それが2週間前の話なのだが、彼女は「それでね……」と、自分のカバンの中から白い封筒を取り出して私に見せた。
「実はこれ、さっき届いたばかりなんだけど……見て! ずいぶん前に応募したハワイ旅行のペアチケットが当たったの!」
どうやら今回も、彼女の耳鳴り予報がプラスに働いた模様で、その対価をしっかり手に入れていた。
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私が彼女と出会ったのも、そんな主婦雑誌の取材の場だった。
Aさんには現在4歳の息子さんがいるのだが、自分が妊婦だった時にダサいマタニティウェアしか売ってなかったことや、息子が誕生した時に「これ着せたいな」と思うような服があまりなかったことから、今の仕事を始めようと思ったそうだ。
Aさんと私は同い年で地元も一緒だったため、初対面の時から意気投合し、その後、プライベートでも食事を共にする仲になった。
つい先日も、彼女の家の近くでランチでもしようという運びになり、昼間っからガールズトークで盛り上がってきたばかりなのだが、その時に聞いた不思議な話。
「私ね、子供の頃、嫌なことが起こる前には、必ず耳鳴りがしてたの」
そう話すAさんは、体育の時間に耳鳴りがしたと思ったら、友達のアキレス腱が切れたり、教室の中で耳鳴りがしたら、先生が脳梗塞で倒れてしまったり、ホームで耳鳴りがした時は隣に立ってたサラリーマンが線路に飛び込んだり……そんな事が多々あったと言うのだ。
その話を聞いて「うわぁ、嫌だぁ」と顔をしかめた私に、Aさんは続けて言った。
「でもね、それが、大人になった頃から様子が変わってきて、耳鳴りと同時に映像が浮かぶようになったの」
それは一体どういうことなのか? というと、例えば、耳鳴りがした時に友達の顔がパッと浮かび、続いて、その子の下腹部あたりに黒い塊が見えたりするらしい。
そんなものが突然目に飛び込んできたAさんは不安になって友達に電話し、聞いてみた。
「もしもし、○子? あのさぁ、変なこと聞くようだけど、最近、お腹の調子が悪かったり痛んだりすることない?」
何の前触れもなく、いきなり友達からこんなことを聞かれたらキョトンとしそうだが、その子はこう答えたそうだ。
「え?なんで、わかるの?そうそう、最近、下っ腹が張ってて痛くてさ……病院行こうかなって考えてたとこなんだけど」
この返答を聞いて、Aさんは即座に言った。
「ねえ、それ、急いで行って!今、時間があるんだったら、すぐにでも!」
Aさんは、その時、これは放っておいたらマズいかもと直感で思い、友達にそうアドバイスをしたところ、案の定、その子に卵巣嚢腫が見つかった。
幸い、嚢腫がまだそれほど大きくなかったため、手術もそんなに困難ではなかったようだが、発見が遅ければ、卵巣ごと摘出しなければならない大変な病気だ。
Aさんの直感に助けられた友達は心底感謝し、お礼の言葉を述べたそうだが、こういったことが、その後も度々起こったと言う。
Aさんは、この耳鳴りと共にフッと頭に映像が浮かぶ現象を“耳鳴り予報”と名付け、これが起こると、そこから先の事態を予想して、友人知人に助言をしていたらしい。
例えば、誰かと会う約束をしている日に耳鳴りがして、壊れた自転車の映像が浮かんだ時は、その人物に「今日は絶対、自転車に乗らずに来て」と命じるなど、そんな具合だ。
そして、ここからがまた不思議な話なのだが、その人物が言う通りにして無事に1日を過ごすことができた場合、後日必ずAさんの身に良いことが起こるそうだ。
それはまるで、Aさんの予想が当たっていて、そこから世のため人のためになるような結果を導き出せたことへの対価のようだった。
こんな不思議な力を持つようになったAさんが、最近、耳鳴り予報を的中させたのは、2週間前のこと。
その日、耳鳴りと共に頭に浮かんだのは、なぜかヤクルトだった。
え?ヤクルト? ……確かに、Aさんの子供はヤクルトを飲むが、大好物というわけでもないし、一応、飲みたいかどうか子供に聞いてみたところ「別に」と言う。
う~ん、何なんだろうなぁ?と疑問に思いながら、夕食の材料を買いに行こうと家を出たところで「あっ!」と声を上げた。
その日は、Aさんの斜め向かいの家で法事が行われていたのだが、そこの家では3年前小さな男の子が亡くなっていた。
男の子は当時2歳で、生きていればAさんの子供の1つ上の年齢だ。
Aさんは「そうか、この子だったんだ」とつぶやき、スーパーで食材を買うついでに5本入りのヤクルトを買って帰ってきた。
そして、それを斜め向かいの家の奥さんに託した。
「あの……差し出がましいようなんですけど、これ、よかったらお供えして頂けませんか?」
そう言ってヤクルトを手渡すと、奥さんは目に涙を浮かべながら
「あ……ありがとうございます! あの子、ヤクルト大好きだったんです。
果物やお菓子は用意してあったんですが、今日は朝から法事の準備に追われて、これだけ、まだ供えてやれなかったんです」
と、ヤクルトを本当に有り難そうに受け取ったそうだ。それが2週間前の話なのだが、彼女は「それでね……」と、自分のカバンの中から白い封筒を取り出して私に見せた。
「実はこれ、さっき届いたばかりなんだけど……見て! ずいぶん前に応募したハワイ旅行のペアチケットが当たったの!」
どうやら今回も、彼女の耳鳴り予報がプラスに働いた模様で、その対価をしっかり手に入れていた。
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