元AV男優のSが体験した話。この出来事がきっかけで、Sは男優を辞めてしまった。
その日、Sは編集室に呼ばれていた。Sは自ら編集に関わるほどの大物でも無いので、こんなことは滅多にない。
「どうしたんすか? 僕なんかを呼んで」
「ちょっと見てほしいものがあるんだ」
監督がモニターを見ながら言った。そのモニターには、10日ほど前にSが男優をしたナンパモノのAVが映っている。
Sが駅前で女の子をナンパし、ホテルへ行って撮影する、というよくある内容のものだ。
ただ、普通のナンパモノは女優を使ってのヤラセなのだが、この作品はガチンコでナンパをしている。モニターの中では、Sとナンパをした女がベッドの上で行為に勤しんでいる。
「なんか、自分で見るのって恥ずかしいっすね」
Sが言うと、
「もうちょい我慢して……あ、ここ!」
突然映像を一時停止した監督。
「これ、何に見える?」
監督は画面の右下を指さした。
「……女の子?」
ベッドとテーブルの間に、小さな女の子の顔が写っている。女の子は「何をしているんだろう?」というような表情で、2人の行為を見ている。
「こ、これってもしかして……幽霊的なやつっすか!?」
「よくわからん。ただ、ちょっとこれも見て欲しいんだ」
監督は映像を巻き戻し、駅前のナンパのシーンに切り替えた。Sがナンパに成功したシーンだ。
そこで映像を一時停止した。Sがナンパに成功し、カメラに向かって変なポーズを決めている。
それを見て笑っている女。
監督は、女の足元を指さした。
「……これ、本当にヤバくないっすか?」
そこには、ホテルのシーンで映っていたあの女の子が立っていた。女のスカートの裾を掴んで、隣に寄り添っている。
その女の子は、撮影をしていた時には間違いなくいなかった。Sは、この子がこの世の人間では無いことを認めざるを得なかった。
監督も渋い表情をして考え込んでいる。まさか幽霊が原因で編集作業が止まるなんて思ってもいなかっただろう。
「でもさ、これ、一時停止しないと気づかないよな?」
監督がSに聞いた。
「ええ、まぁ」
「そうだよな。じゃあ別に、このシーンはカットしなくていいか」
「い、いや、なんかあったら嫌だからカットした方が」
Sが慌てて言うと、監督は
「そう? じゃあそうするけどさ」
と、渋々編集を再開した。
カットどころでは済まないことになるとも知らずに。
「もしもしS? あのナンパモノ、お蔵入りになったから」
寝起きで電話に出たSに、監督は投げやりな口調で言った。
「え、どうしたんすか?」
「〇〇新聞の記事読んでみろ。びっくりして死ぬなよ」
──ガチャン。
それだけ言うと、電話は切れてしまった。気になったSは、眠い目をこすって新聞を買ってきた。
「どこのページかくらい教えてくれよ」
隅々まで記事を探すS。
「ん……うぇ!? マジかよ……」
記事を見つけたSは絶句した。
“25歳母親逮捕 娘を放置して死なせる”
逮捕された母親は、ナンパモノに出ていたあの女だった。2歳の娘を放置したまま1ヶ月遊び歩き、餓死させたというのだ。
亡くなった子供の写真は、AVに映っていた幽霊そのものであった。母親の帰りを待ち続けた娘は、亡くなってやっと母親のそばにいることができたのだ。
それなのに、母親はナンパをされてAVに出ていた。あまりにも残酷である。
ナンパをした当事者のSは、言いようのない罪悪感に襲われた。
そして、AVというもの自体にも嫌悪感を抱くようになってしまい、男優を辞めていくのだった。
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その日、Sは編集室に呼ばれていた。Sは自ら編集に関わるほどの大物でも無いので、こんなことは滅多にない。
「どうしたんすか? 僕なんかを呼んで」
「ちょっと見てほしいものがあるんだ」
監督がモニターを見ながら言った。そのモニターには、10日ほど前にSが男優をしたナンパモノのAVが映っている。
Sが駅前で女の子をナンパし、ホテルへ行って撮影する、というよくある内容のものだ。
ただ、普通のナンパモノは女優を使ってのヤラセなのだが、この作品はガチンコでナンパをしている。モニターの中では、Sとナンパをした女がベッドの上で行為に勤しんでいる。
「なんか、自分で見るのって恥ずかしいっすね」
Sが言うと、
「もうちょい我慢して……あ、ここ!」
突然映像を一時停止した監督。
「これ、何に見える?」
監督は画面の右下を指さした。
「……女の子?」
ベッドとテーブルの間に、小さな女の子の顔が写っている。女の子は「何をしているんだろう?」というような表情で、2人の行為を見ている。
「こ、これってもしかして……幽霊的なやつっすか!?」
「よくわからん。ただ、ちょっとこれも見て欲しいんだ」
監督は映像を巻き戻し、駅前のナンパのシーンに切り替えた。Sがナンパに成功したシーンだ。
そこで映像を一時停止した。Sがナンパに成功し、カメラに向かって変なポーズを決めている。
それを見て笑っている女。
監督は、女の足元を指さした。
「……これ、本当にヤバくないっすか?」
そこには、ホテルのシーンで映っていたあの女の子が立っていた。女のスカートの裾を掴んで、隣に寄り添っている。
その女の子は、撮影をしていた時には間違いなくいなかった。Sは、この子がこの世の人間では無いことを認めざるを得なかった。
監督も渋い表情をして考え込んでいる。まさか幽霊が原因で編集作業が止まるなんて思ってもいなかっただろう。
「でもさ、これ、一時停止しないと気づかないよな?」
監督がSに聞いた。
「ええ、まぁ」
「そうだよな。じゃあ別に、このシーンはカットしなくていいか」
「い、いや、なんかあったら嫌だからカットした方が」
Sが慌てて言うと、監督は
「そう? じゃあそうするけどさ」
と、渋々編集を再開した。
カットどころでは済まないことになるとも知らずに。
「もしもしS? あのナンパモノ、お蔵入りになったから」
寝起きで電話に出たSに、監督は投げやりな口調で言った。
「え、どうしたんすか?」
「〇〇新聞の記事読んでみろ。びっくりして死ぬなよ」
──ガチャン。
それだけ言うと、電話は切れてしまった。気になったSは、眠い目をこすって新聞を買ってきた。
「どこのページかくらい教えてくれよ」
隅々まで記事を探すS。
「ん……うぇ!? マジかよ……」
記事を見つけたSは絶句した。
“25歳母親逮捕 娘を放置して死なせる”
逮捕された母親は、ナンパモノに出ていたあの女だった。2歳の娘を放置したまま1ヶ月遊び歩き、餓死させたというのだ。
亡くなった子供の写真は、AVに映っていた幽霊そのものであった。母親の帰りを待ち続けた娘は、亡くなってやっと母親のそばにいることができたのだ。
それなのに、母親はナンパをされてAVに出ていた。あまりにも残酷である。
ナンパをした当事者のSは、言いようのない罪悪感に襲われた。
そして、AVというもの自体にも嫌悪感を抱くようになってしまい、男優を辞めていくのだった。
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