若手芸人が先輩の運転手を務めることが多々ある。メシを食わせてもらう代わりに運転手をするのだが、これが冷や汗ものだという。
何しろ、売れている先輩が乗っている車はとんでもなく高級な車が多いのだ。もしも、ぶつけてしまったら一体いくらになるのか?それを考えただけで身がすくんでしまう。
実際に、先輩の車を運転していて車庫入れでぶつけてしまい、修理代がバンパーだけなのに80万円も請求された後輩もいる……。
ましてや事故って先輩にケガでもさせてしまったら、とりかえしのつかない事になってしまう。
そんなプレッシャーのかかる事は断ればいいものだが、先輩の命令は絶対のこの世界では無理な話である。
ところが、あろうことか師匠の車を廃墟に置いて帰ってきて、クビになった若手芸人が過去にいたのだ。
そいつは女が好きで好きでしょうがないヤツだった。師匠のカバン持ちの仕事をほったらかして合コンに行ったり、女とデートするために出番を飛ばしたりとかなりの問題児だった。
ただ、漫才の腕はなかなかの筋で師匠もなかなかクビとは言えなかった。むしろ、やんちゃな彼に手を焼いてはいたが、期待もかけていた。
その彼が、ある日真剣な顔で師匠の元に来た。何事かと心配して話を聞くと、「どうしても落としたいモデルがいる」と目に涙を浮かべて訴えてきたのだった。
さらに「売れない漫才師だとなめられるので、師匠の車を貸してほしい」と土下座をして頼んできた。
女を口説くために師匠にとんでもないお願いをする彼に、師匠も思わず笑ってしまった。そして、高級外車のキーを彼に貸したのだった。
彼は喜び勇んで、モデルの女の子と連絡を取り高級外車で迎えにいった。彼女のリアクションも相当良かったという。
食事を済ませたあと、彼はあるイベントを考えていた。それは『肝試し』だった。
以前、彼女と話している時に話題に上ったある廃墟へと車を飛ばした。そこは、3階建ての廃ビルで、もともと病院だったという。
しかも、産婦人科だったらしく度々ハイハイをする赤ちゃんの霊や、子供の泣き声などがどこからともなく聞こえてくるという噂があった。
師匠に貸りた高級外車を駐車場だったらしき場所へ停め、2人は廃墟を見上げた。
9月に入ってもまだ暑い夜。どこかでバカなセミがまだ鳴いていた。そんな中、静かにたたずむ廃墟にはなんとも言えない迫力があった。
後で考えれば、2人とも帰りたかったのであろうが、どちらも言いだせず無言のままビルの中へ入っていった。
最初は、ビクビクしていた2人だったが、元々病院だという割には室内には何も置かれておらずただの空き部屋が並ぶ、なんてことないビルだった。
拍子抜けした2人は次第に余裕を取り戻してきた。誰も居ない事をいいことにキスしたりイチャイチャしたりとじゃれあっていた。
結局、肝試しよりももっと興味のある事が出来た2人は、「もう行こうか」とビルを出て駐車場に停めてある車に向かった。
ところが、車に乗り込もうとした瞬間、彼女が悲鳴をあげた。
「キャーー!!」
びっくりした彼が彼女の乗り込もうとする助手席の方へ回り込むと、彼女は窓を指差して震えていた。
見るとドアのガラス一面に手形がびっしりついていた。びっくりした彼は彼女を安心させるために言った。
「誰かのイタズラだよ」
しかし彼女は首を激しく横に振って、言った。
「これ、子供の手……」
小さい紅葉のような手形は、大人ではなく子供のもの。むしろ、赤ちゃんの手と言った大きさだろうか──。
「こっちにもある!」
彼女が指差したフロントガラスにもビッシリと赤ちゃんの手形が……。結局それはガラスというガラスにベタベタとついていた。
すっかり怯えていた彼女を安心させるため、わざと軽い口調で彼はいった。
「こんなの……、ササーッと拭けば簡単に消えます~」
彼は着ていたTシャツのすそで手形を消すために窓を拭いた。
しかし消えなかった…。
その手形はどれも車の中からつけられたものだったのだ。
「中に何かいるー!!」
何を見たのかわからないが、そう叫んだ彼女。
すっかり怖くなった彼は彼女の手をひいて駐車場をあとにして帰ってしまった。
翌日、明るくなった頃。彼はその駐車場に車を取りに戻りましたが、もうすでになくなっていたそうです。
その後、土下座して師匠にその話を報告した彼はクビになってしまいました。
クビの理由は高級外車を盗まれたという事ではなく、あんな体験をした直後に2人がタクシーを拾ってホテルに行ったのが直接の原因だったそうです。
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何しろ、売れている先輩が乗っている車はとんでもなく高級な車が多いのだ。もしも、ぶつけてしまったら一体いくらになるのか?それを考えただけで身がすくんでしまう。
実際に、先輩の車を運転していて車庫入れでぶつけてしまい、修理代がバンパーだけなのに80万円も請求された後輩もいる……。
ましてや事故って先輩にケガでもさせてしまったら、とりかえしのつかない事になってしまう。
そんなプレッシャーのかかる事は断ればいいものだが、先輩の命令は絶対のこの世界では無理な話である。
ところが、あろうことか師匠の車を廃墟に置いて帰ってきて、クビになった若手芸人が過去にいたのだ。
そいつは女が好きで好きでしょうがないヤツだった。師匠のカバン持ちの仕事をほったらかして合コンに行ったり、女とデートするために出番を飛ばしたりとかなりの問題児だった。
ただ、漫才の腕はなかなかの筋で師匠もなかなかクビとは言えなかった。むしろ、やんちゃな彼に手を焼いてはいたが、期待もかけていた。
その彼が、ある日真剣な顔で師匠の元に来た。何事かと心配して話を聞くと、「どうしても落としたいモデルがいる」と目に涙を浮かべて訴えてきたのだった。
さらに「売れない漫才師だとなめられるので、師匠の車を貸してほしい」と土下座をして頼んできた。
女を口説くために師匠にとんでもないお願いをする彼に、師匠も思わず笑ってしまった。そして、高級外車のキーを彼に貸したのだった。
彼は喜び勇んで、モデルの女の子と連絡を取り高級外車で迎えにいった。彼女のリアクションも相当良かったという。
食事を済ませたあと、彼はあるイベントを考えていた。それは『肝試し』だった。
以前、彼女と話している時に話題に上ったある廃墟へと車を飛ばした。そこは、3階建ての廃ビルで、もともと病院だったという。
しかも、産婦人科だったらしく度々ハイハイをする赤ちゃんの霊や、子供の泣き声などがどこからともなく聞こえてくるという噂があった。
師匠に貸りた高級外車を駐車場だったらしき場所へ停め、2人は廃墟を見上げた。
9月に入ってもまだ暑い夜。どこかでバカなセミがまだ鳴いていた。そんな中、静かにたたずむ廃墟にはなんとも言えない迫力があった。
後で考えれば、2人とも帰りたかったのであろうが、どちらも言いだせず無言のままビルの中へ入っていった。
最初は、ビクビクしていた2人だったが、元々病院だという割には室内には何も置かれておらずただの空き部屋が並ぶ、なんてことないビルだった。
拍子抜けした2人は次第に余裕を取り戻してきた。誰も居ない事をいいことにキスしたりイチャイチャしたりとじゃれあっていた。
結局、肝試しよりももっと興味のある事が出来た2人は、「もう行こうか」とビルを出て駐車場に停めてある車に向かった。
ところが、車に乗り込もうとした瞬間、彼女が悲鳴をあげた。
「キャーー!!」
びっくりした彼が彼女の乗り込もうとする助手席の方へ回り込むと、彼女は窓を指差して震えていた。
見るとドアのガラス一面に手形がびっしりついていた。びっくりした彼は彼女を安心させるために言った。
「誰かのイタズラだよ」
しかし彼女は首を激しく横に振って、言った。
「これ、子供の手……」
小さい紅葉のような手形は、大人ではなく子供のもの。むしろ、赤ちゃんの手と言った大きさだろうか──。
「こっちにもある!」
彼女が指差したフロントガラスにもビッシリと赤ちゃんの手形が……。結局それはガラスというガラスにベタベタとついていた。
すっかり怯えていた彼女を安心させるため、わざと軽い口調で彼はいった。
「こんなの……、ササーッと拭けば簡単に消えます~」
彼は着ていたTシャツのすそで手形を消すために窓を拭いた。
しかし消えなかった…。
その手形はどれも車の中からつけられたものだったのだ。
「中に何かいるー!!」
何を見たのかわからないが、そう叫んだ彼女。
すっかり怖くなった彼は彼女の手をひいて駐車場をあとにして帰ってしまった。
翌日、明るくなった頃。彼はその駐車場に車を取りに戻りましたが、もうすでになくなっていたそうです。
その後、土下座して師匠にその話を報告した彼はクビになってしまいました。
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