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私は言葉が喋れない。
いつも馬鹿にされて、役立たずで私に気を留めてくれる人なんて誰一人いなかった。家族もいないし、ひとりぼっちの寂しい人生。

でもある日、優しい男が現れて喋れなくても落ち込むことはないと言ってくれた。喋れなくても、人の役に立ち、人を幸せにすることは出来るんだよと言ってくれた。

私は嬉しかった。こんな私でも人の役に立てるかもしれない。

ある日、優しい男が花束を、ある人に届けてくれと頼んできた。事情があって、優しい男は花束を届けることができないらしい。

私は人の役に立てることが嬉しくて快諾した。話を詳しく聞くと、花束を贈る方は国連の偉い方らしい。

凄い、私が華やかな舞台で花束贈呈の大役を果たせるなんて。私は優しい男から花束を受け取り、翌日のセレモニーに臨んだ。

大勢の招待客の中から一歩進み出て主賓の方に花束を渡す。その時、優しい男が遠くから微笑みながら私を見つめていることに気がついた。

生まれて初めて人の役に立てる。私は興奮し、そして嬉しかった。

主賓の方も、花束を渡すと嬉しそうに微笑んでくれた。色とりどりの花が眩しかった。

【解説】
花束を渡して欲しいと依頼してきたのはテロ組織の一人だった。色とりどりの花は爆発物で話すことが出来ない男はテロの片棒を担がされた。
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