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808 :1/3:2006/01/22(日) 01:18:36 ID:0xPCHD5z0
子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。
その人はヘルメットをかぶっていて、えりあしに布がひらひらしてて、
緑色の作業服のような格好で、足にはほうたいが巻かれていた。
小学生になってわかったが、まさに兵隊の格好だった。

その兵隊さんは私が1人で遊んでいる時だけでなく、
校庭で遊んでいる時や母と買い物でスーパーに行った時、いつでも現れた。
少し離れたところで立って、私を見つめている。
自分以外には見えていないし、いつもいつの間にか消えている。
私も少しはこわがってもよさそうなものだったが、
何せ物心ついた時からそばにいるし、何よりその人から恐怖心を感じるようなことは全くなかった。
きりっとしてて優しげで、古き良き日本人の顔って感じだった。


809 :2/3:2006/01/22(日) 01:19:32 ID:0xPCHD5z0
やがて中学生になった。

ある日、いつもと違うことが起きた。
テストを控えた寒い日、夜遅くに私は台所でミロを作っていた。
ふと人の気配がしたので横を見ると、兵隊さんがいた。
けれど、その日は手を伸ばせば触れるくらいそばにいた。
ぼけた私が思ったことは、「意外と背低いんだな」くらいだった。

—それは何でしょうか?
体の中に声が響いたような感じだった。
兵隊さんを見ると、まじまじとミロの入った鍋を見ている。
ミロって言ってもわかんないよね・・・と思った私は、
「半分こしよう」と言ってミロを半分にわけて、カップを兵隊さんに渡した。
—失礼します。
そう声が響いて、両手にカップを持って、ふうふうしながら兵隊さんはゆっくり飲んでいた。
その時の兵隊さんの顔は、柔らかくてすごくうれしそうだった。

飲み終わって、また声が響いた。
—こんなにうまいものがあるんですね。
少なくて悪いかなと思った私は、「おかわりする?」と聞いたが、
兵隊さんはカップを私に手渡して、敬礼してふっと消えてしまった。


810 :3/3:2006/01/22(日) 01:20:56 ID:0xPCHD5z0
別の日に1人で家にいる時、クッキーを作っていた。
焼きあがり、冷まそうとお皿に並べていたら、人の気配がしたので窓を見ると、庭先に兵隊さんがいた。
私はおいでよと手招きをしたが、兵隊さんはにこっとして首を横に振った。
あれ?と思っていたら、兵隊さんは敬礼して、ふわっと消えた。
ヘルメットから出てる布が、ふわりとしたことを覚えてる。
それきり、兵隊さんは私の前には現れなくなった。

今でも兵隊さんのことを思い出す。
美味しいものを食べた時や料理が美味しく出来た時、
兵隊さん、どこかで美味しいもの味わえているかなあと。


812 :本当にあった怖い名無し:2006/01/22(日) 01:29:11 ID:2gGmFmI10
なんか、ほのぼのする話だな…(*´∀`)
成仏しているか、こっそり摘み食いしているか
でも、何者さんなんだろうね…
おばあちゃんやおじいちゃんに、戦争で無くなった兄弟がいるか聞いてみたら、案外見付かるかも

しかし、心がほっこりする話だ


815 :808:2006/01/22(日) 01:48:47 ID:0xPCHD5z0
レスありがとうございます。
兵隊さんも、どこかで見てくれてるとうれしいんですけどね。
ついでに私に見えなくても、美味しいもの食べてる時は、つまみ食いしてくれてるといいな・・・

>>812
小学校高学年の時、親に聞いてみたんですが、
うちの親類で、戦争に行って亡くなった人は誰もいないんですよ。
遠くの親戚まではわかりませんが、心当たりはないんです。

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