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夏になるとかならずあるのが心霊番組。

僕自身あまり好きではないので関わりたくはないのだが、頼まれた仕事を断れるほど偉くないので受けるしかないのが現状である。その中でも一番怖かった心霊番組の話だ。

心霊番組の仕事をすることになった。
季節は夏前になる。

放送を夏に合わせるため打ち合わせはその数ヵ月前から始まるため、「もうそんな時期か?」という感覚も世間より早めにやってくる。

内容はベタに心霊スポットをまわったり、心霊写真を紹介したりするものが番組の大半を占めるのだが、その中に若手芸人が怖い話をするコーナーがあった。

怖い話をたくさん持っている芸人が怖い話をする、話もうまいしギャラも安いしリサーチしなくてもオーディションをすれば向こうからやってきてくれる。まさに一石三鳥である。

僕はそのオーディションをすることになった。ディレクターと僕が長机の前に座り、正面に芸人が座って怖い話をする。それをカメラで撮影する。これがオーディションの基本スタイルである。

オーディションなので早く終わればいいな程度の軽い気持ちだったが、途中から本当に怖くなってトイレも自然にディレクターと一緒に行くようになっていた。

そこでディレクターが「怖い話もあるけど、なんか聞いたことあるようなのばっかりだね。話もよく聞くと矛盾してるのも多いし」と言ってきた。

もちろん本当の話はなかなかないもので、本当の話は怖くなかったりするのでそれを少し脚色してもってくるのだ。その作業の際に矛盾が生まれたりする。

僕は「でもそれは後で直せるので大丈夫ですよ」と言った。これ以上怖い話を聞きたくない一心で。

トイレから戻り、オーディションを再開した。それは再開して1人目の時に起こった。

その若手芸人Eの話が「僕の友達の話なんですが、昔小学生の頃3人で肝試しに近所の廃屋の洋館に行った時、友達の1人が突然、絶叫して洋館を飛び出した。

もちろんあとの2人も続いて大声を上げて飛び出し、その子に事情を聞くと『……出た、上から見てた……』とひどく震えながら言ったので怖くなりそのまま帰宅、翌日その子の母親がその洋館で首吊り自殺をしたというのを聞いた。

その子が見たというのは自分の母親で、それからその子もおかしくなり、同じ場所で自殺した」というものだった。

正直「嘘くさい!」と思ったが、怖い話としては良かった。

するといつも意見などする訳もないADの女の子が「その話、嘘ですよね」と突然言ってきた。

若手芸人Eはもちろん

「嘘じゃないですよ!」

と言うがADがしつこく

「嘘は言わない方がいいですよ」

と言ってるので、ディレクターが

「お前、何言ってんだよ、知ってる話なのか?」

と聞くと、ADは

「いや、Eさんが話してる間ずっと、後ろで男の子が『嘘つくな! 嘘つくな!』って言った」

全員青ざめたが一番青ざめたのは話していたE本人で、聞くと友達の少年が首吊り自殺した以外は作った話だった。

後でEが話していたのを撮ったVTRを見てみると話してる最中ずっと雑音が「ザ──」と入っていて、何をしゃべってるかまったくわからない状態になっていた。

これが一番怖かった話だがVTRが使い物にならないし、嘘っぽくなるので本番では使えなかった。
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