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三鷹(5万3千円)→阿佐ヶ谷(6万円)→高円寺(7万5千円)→東中野(9万円)

これは、今からおよそ10年前に私が作家を目指して上京してから現在に至るまでの居住場所と家賃の経緯。

JRの中央・総武線に沿って徐々に徐々に都心部へ攻め込むと同時に、家賃もそれなりにステップアップしているのがおわかり頂けると思いますが、このお話は、私が阿佐ヶ谷に住んでいた頃の出来事です。

三鷹時代に比べれば、仕事も収入も少しは増え、生活も安定してきたものの、贅沢はできない状況……そんな折、家の電話が故障してしまい、頭を悩ませた私は近所のリサイクルショップで新しい(中古の)電話を買うことにしました。

通常、1人暮らしだと、家の電話なんかなくても携帯だけで十分なんですが、私たちの場合、仕事で時折ファックスを使うこともあるため、ファックス機能付きの電話機が必要なのです。

しかし、新品の電話機を買うだけの余裕はなかったので、中古品にしたのですが、白いボディのその電話は見た目もキレイで、そんなに古いものでもありませんでした。

さっそく家に帰って電話をセットした後、実家にファックスを送ってみたり、留守電機能も大丈夫かどうか、携帯から自宅の番号に電話して確かめてみましたが、全く問題ナシ。

自宅にいると「家を買え」だの「保険に入れ」だの鬱陶しい勧誘の電話がよくかかってくるため、留守電機能も必須なのです。

留守電になっていると、大体は諦めて電話を切りますから。そんなこんなで電話を付け換えてから数週間ほど経った、ある日──。

「ママ、おわったよ。むかえにきて!」

夜、家でくつろいでいると、留守番電話にこんなメッセージが入りました。時間は8時を少し回ったぐらいで、この時間だと、さすがに勧誘の電話は少ないのですが、家族や友人なら携帯にかけてくるはずなので、面倒だし、出なかったのです。

「あぁ、可哀そうに。電話番号、間違えてるよ……」

その当時、私に子供はおりませんでしたし、夫はおろか彼氏すらいない状況でしたので、小学生からママと呼ばれる筋合いはなく、それは明らかに間違い電話でした。

「むかえにきて」ということは、その子はどこかで母親の迎えを待っているんだろうなぁと思うと気がかりでしたが、しばらく待って来なければ、今度はちゃんと自分の家に電話を入れるだろう。

そう思いながら20分ほど部屋でテレビを見たりして過ごしていると、再び電話が鳴り

「タダイマ、ルスニシテオリマス……」

のアナウンスの後には、また同じ女の子の声が聞こえてきました。

「もしもし……ママ? おわったんだけど、おむかえ……」

女の子が話し終わらないうちに、今度はちゃんと電話に出なければ!と思った私は、受話器を取って言いました。

「もしもし? あのね、さっきも電話くれたみたいだけど、電話番号、間違ってると思うんだ。何番にかけた?」

すると、女の子は少しオドオドしながら答えました。

「え……えっと……03-3589-××××」

私はその番号を聞いて、自分の家の番号と全く違うのになぜ?と思いながら、

「え? そう。ウチは3365-△△△△だから全然違うんだけど、なんでだろうね?でも、もう1回、落ち着いて、ゆっくりかけてごらん」

そう言って、電話を切りました。
しかし……その数秒後にまた電話が鳴ったので、今度はすぐに受話器を取りました。

「もしもし?」

「もしもし? さっきの子だよね?」

「うん……」

「電話番号、さっき言ってた通りの番号にかけた?自分のおウチの番号」

「うん……おうちにかけたんだけど……なんで? ……」

こっちこそ、なんで?と聞きたいところでしたが、電話口で女の子が泣きそうになっているので、

「なんでだか本当にわからないんだけど……。ねえ、今、どこにいるの?」

私がそう聞くと、女の子は答えました。

「●●こうえんの、はしのところ。ママが、そこでまってなさいって……」

●●公園と言えば、杉並区にある桜の名所で、そういえば、その近くの大通りに橋があったなぁと思い出した私は、思い切って言いました。

「そうか、わかった。じゃあさぁ、そこを動かないで待っててくれる?ちょっと時間はかかると思うんだけど、今から行くから」

女の子にそう告げて家を出た私は、さすがに、その場所まで1人で行くのは不安なのと、とても歩ける距離ではなかったため、警察署に寄って事情を話しました。

女の子から立て続けに間違い電話が入ること。どうやらその子は母親の迎えをずっと待っていること。

でも、どういうわけか、自分の家に電話が繋がらないこと。

そして、その子は今、●●公園近くの橋のそばにいること。その全てを話した結果、1人の警官がパトカーを出してくれることになり、私もそれに同行する形で現場に向かいました。

その後15分ほどで、女の子が指定した場所に着いたのですが、橋の上にそれらしい人影はありません。

私も警官もそこら辺を見渡しましたが、女の子はどこにもおらず、おかしいなぁと首をひねっていると、

「あっ……」

警官が橋のたもとで何かを発見し、声を上げました。

「どうしたんですか?」

と、警官の元に駆け寄り、彼の視線の先を見てみると、そこには、たくさんの花やお菓子が手向けられていました。

「え……? これって……」

その状況を見て、思わず絶句してしまった私に、警官は言いました。

「あぁ、……そういや何年か前、小学生の女の子が車に轢かれて……。確か、塾が終わって、母親の迎えを待ってたんじゃなかったかな。でも、可哀そうに……お迎えが来る前に逝っちゃって……」
 
警官の言葉を聞いた私はそこで手を合わせ、彼女の成仏を心から祈りました。
 
間違い電話がかかってきた日が女の子の命日だったのか、はたまた、私が買った中古の電話が昔その子の家で使われていたものだったのか、真相はわかっていませんが、その後すぐに電話はリサイクルショップに出してしまったので、もしかしたら、現在、どこかで使われているかもしれません。

どこのどなたがお使いになっているかわかりませんが、もし万が一、知らない女の子から電話がかかってきた際は、どうか親切に対応してあげてください。
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