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710 :本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 10:35:16 ID:MRvT/nBZ0
12月5日
タクシー運転手の俺は、東京から箱根までの客を乗っけて上機嫌だった。
客を降ろした帰り道。
そのころには夜の11時を過ぎていて、山奥は真っ暗だった。
山道を走りながら、「おばけでも出たらヤダなぁ」なんて、
いかにも出そうな雰囲気に、ビクビクしながら帰っていた。

すると、明りも少ない山道の先に、白い布のようなものが、時々チラチラと赤く動いている。
くねくねした道路のためはっきりとは見えないが、俺は確実にそれに近づいていた。
何だろうとは思いながらも、誰かの落とした柄シャツか何かだろうと、
頭によぎるオカルトな想像を打ち消しながら運転していた。

『それ』が5メートルぐらいに近づいたとき、心臓がぎゅぅと掴まれるように苦しくなった。
『それ』は血まみれの若い女だった。
女は口をパクパクしていて、両手を挙げてゆっくり揺らしていた。
顔は真っ白で、頭からドクドクと流れ出る血をさらに赤くしてみせた。
想像どうりのオカルトな展開に、苦しくなった心臓はさらに苦しくなった。
「ぎゃぁ!!幽霊だ!」
とっさにアクセルをさらに踏んでスピードをあげて、行き絶え絶え、とにかくその場から必死で逃げた。

その夜は帰宅したのが深夜3時。
恐怖でほとんど眠れないまま過ごした。

12月6日
昼ごろ眠りにつく。

12月7日
休み。ボーっとする。


711 :本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 10:37:49 ID:MRvT/nBZ0
12月8日
出勤。事務所に行く。
事務所に着くなり、同僚が「幽霊を見た!」と騒いでいた。
興味がわいてよく聞くと、
「昨日の夜に箱根付近で、若い血まみれの女がタクシーを止めようと手を挙げていた」
というものだった。
全く同じものを見たことのに驚いて、俺は同僚に5日夜のことを話す。
その同僚と「やっぱりあれは幽霊なんだ」とあらためて確認して、背筋が寒くなったのを感じた。


712 :最後:2008/12/09(火) 10:39:19 ID:MRvT/nBZ0
12月9日
出勤。事務所に行く。
また事務所に着くなり昨日の同僚が、今度は新聞を持って血相を変えて話しかけてきた。
「おれらが見たのはこの女に違いない!」
そう言うと新聞を見せてくれた。
『箱根山中で若い女の他殺体が見つかる。
 女性は鈍器で殴られ出血死。交際相手の男が事件後連絡が着かない。
 車で逃走中の模様。車は○○のシルバーのセダン…
 現在指名手配されている。』等々…。

「この女の幽霊を俺はみたんだ!」
一気に高揚していくのを抑えきれずにいた。
俺は新聞から目を離し、また同僚と興奮気味に血まみれの女の話をし始めた。
「こえー!おれ幽霊みたの始めてだよ」
「あの顔はやっぱり生きてる顔じゃねーよな!」

話しながら、何気なくまた新聞に目をやる。
『死亡推定時刻は12月6日朝8時。』







俺が見た血まみれの女、その時はまだ 幽霊じゃなかったんだ…。


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