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185 :本当にあった怖い名無し:2008/07/27(日) 10:04:58 ID:jArUlz+o0
うはwなんというライトノベルwだが面白い。もっと読みたいです!


187 :156:2008/07/27(日) 15:00:56 ID:EfKEngun0
わかった、凄く長いし面白くなさそうだが、全部ここに載せるよ。

昔々、ある所に与作という村人が居た。
与作が何時ものように野良仕事をしに行くと、
金色の毛並みを持ち、尾が6本もある狐が瀕死の状態だった。
可哀想に思った与作は、狐を連れて帰り治療をしてやった。
与作の懸命な治療の甲斐あって、狐は元気になった。
元気になった狐を、与作は森に放してやった。

それから五年後、ある夜に、与作の元にかなりの美人が訪ねて来た。
どうやら話によると五年前の狐らしく、恩返しの為に来たらしい。
正直言って、いくら与作でも信じられなかったが、目の前で狐の姿に戻られたのでは信じざるおえなかった。

狐はどんな願いでも叶えてやると言った。
しかし与作には正直言って、望むような願いなど無かった。
ただ、もし願うのならば、皆が平穏で幸せな日々を送る事だけだった。
その旨を狐に伝えると、狐はあきれた顔で、
「お前は馬鹿か?自身への恩賞でなぜ他者の幸福を望む?」と言った。
与作は、「だって、皆が幸せならおらだって幸せだもの」と返した。
狐は、「それはお前が贅沢を知らないのと、お人好しだからだ」と返し、
続けてため息を付きながら、
「仕方が無い、お前が本当の願いを見つけるまで、お前を守ってやる。
 食い扶持の事なら安心しろ。お前を養う位は簡単なことだ。
 だから心配せずに、何を願うのかをゆっくりと考えるといい」
こうして狐は、与作の家に居ついた。


188 :156:2008/07/27(日) 15:01:38 ID:EfKEngun0
それから幾日か経った時の事、狐が「贅沢を教えてやる」と言って、与作を大きな町に連れて行った。
そして与作は、大きな屋敷の中に通された。
中には、与作が見た事の無いような豪華な食事や、多数の美女が用意されていた。
与作は萎縮してしまい、料理にも女性にも手を出せない。
そんな与作を見た狐は、料理を皿に盛って、与作に箸渡しで食べさせた。
料理の美味しさに感激した与作は、貪る様に料理を食べた。

やがて満足した与作は、狐にお礼を言った。
狐は上機嫌で、
「満足したのならばそれで良い。
 ところで与作、これ以上の食事を毎日食べたくは無いか。それ位なら簡単に叶えてやれるが?」
与作は、
「それは勘弁だ。たまにだから良いんだから。
 ところで、残った料理持って帰って良いか?村の皆にも食べさせてあげたいだ」
すると狐は怒って、「あいつらは恩を仇で返すような連中だ。だから駄目だ」。
与作は驚いて、「そんな事は無いと思うけどなあ?」と返した。
狐は諭すように、
「良いか与作。ほとんどの人間は、恩を仇で返すような連中だ。
 お前達に対して威張ってるような連中も、その上で君臨してる連中も皆そうだ。
 普通の人間というのは、人の弱みに付け込んで、自分だけ旨い汁を吸おうとするんだ。
 お前みたいな馬鹿なお人好しは初めて見るが、そんなお前が長生き出来るとは思えん」
そう言うと狐は、与作を連れて家へと帰った。

その後も、こんな感じの事を狐は何度もやったが、基本的に与作の対応は変わらなかった。


189 :156:2008/07/27(日) 15:02:28 ID:EfKEngun0
ある夜、狐は言った。
「今でも、お前には望みは無いのか?」
与作はこう返した。
「うーん、今でもやっぱり皆幸せなのがいいだ。でも、もう一つ欲しい物が出来ただ」
狐は破顔すると、
「そうかそうか、お前にもやっと人並みの欲望が出てきたか。それで欲しい物とは何だ?」
与作は照れながら、
「狐が欲しいだ・・・」
狐はきょとんとして、
「え・・・わたし。なんだ美女がほしいのか?だったら私以上の美女をお前にやろう」
与作はまじめな顔で、
「ちがうだ。おらはお前が欲しいんだ」
狐は完全に顔を真っ赤にして、
「お前が人をからかう事を覚えるなんてな。少しは人が悪くなったようだな」
与作は「おらは本気だ」と返した。
狐は泣きそうな顔で、
「どうして私なんだ?私の何が好きになったんだ?」
与作は、
「何をと言われても困るだ。
 狐のきれいな髪も肌も目も好きだし、時折の仕草も好きだし、狐の優しい所とかも大好きだ」
狐は泣きながら、
「下手な口説き文句だな。でも真心込めて口説かれたのは初めてだ。とても嬉しい。
 でもその願いは叶えられない」
与作は「どうしてだ」と問うた。
狐は、
「だって、私だってお前と一緒にいたい。
 お前の傍だと、今まで感じたことの無い位に優しい気持ちになれるんだ。
 お前の為に何かをしたいと自然と思える。
 でもそれは卑怯だ。どう考えた所で、お前がくれた物と私とでは釣り合わない。
 そもそもそれでは恩返しにならない」
与作は言った。
「おらが狐が大好きなのは変わらない。狐もおらが好きなら夫婦になろう。
 そうすればおらはとても幸せだ」
狐は、
「わかった夫婦になろう。でもそれはお前の願いだからじゃない、私の望みだからだ」
与作は笑って、「うん、これからもよろしくな狐」と答えた。

それから幾つかの年月が過ぎた後に、与作と狐の間に待望の男の子が生まれた。
与作と狐は、その子供に真作と名付けた。
二人は幸せの絶頂だった。


190 :156:2008/07/27(日) 15:03:35 ID:EfKEngun0
しかし、そんな彼等を憎憎しげに見つめる者が居た。
それは一人の娘だった。
娘は、昔から与作の良さを知っていた。
ただ、恥ずかしくてその想いを伝えられなかったのである。
そして気が付けば、与作の横には何時も狐が居て、二人の関係は強固になっていた。

最初は想いをこらえていた娘も、やがては激しい憎悪に屈してしまった。
娘は狐から与作を取り戻すべく計画を立てた。
まずは協力者を探す事、これは簡単だった。
なぜならば、狐に欲情しているうえに、恨んでいる男を知っていたからだ。
その男とは、村長の所の長男だった。
長男は妻が居ながら、好色で暴力的で、怪力以外の美点が無いような男だった。
長男は以前、狐に夜這いしたが返り討ちにあい、それ以来復讐の機会を探っていた。
娘は長男を言葉巧みに、自身の計画に参加する事を承諾させた。


191 :156:2008/07/27(日) 15:04:36 ID:EfKEngun0
まずはこの娘と長男は、与作と狐の弱味を握る為に情報を集めた。
その結果、狐は満月の夜だけは人の姿を保てずに狐に戻る、と知った。
狐が妖怪の類だと知った二人は、狐の弱点を調べた。
その結果、妖怪は基本的に鉄に弱い事や、
満月の時に力を発揮するものは、基本的に新月の時には力の大半を封じられる事がわかった。

ここまでわかった二人は、狐を嵌める為に、
与作が野良仕事中に熊に襲われたという嘘で、狐を人気の無い所までおびき寄せた。
何時もの狐なら嘘を見破れただろうが、与作の危機と聞いて冷静では居られなくなって、罠に嵌められたらしい。
結局、狐は鉄の輪をはめられて、男に村長の家の蔵の中に幽閉された。

与作は突然行方不明になった狐を何ヶ月も捜索したが、
見つかったのは、前に与作が狐にあげたお守りだけだった。
そして狐を嵌めた娘も、必死に捜索に協力をしているように見せかけた。
狐の生存が絶望視されて、与作はまともに食事が喉を通らなくなって、ついに倒れたらしい。
娘は必死に看病して、その折に与作と狐の子とも仲良くなったらしい。


192 :156:2008/07/27(日) 15:06:03 ID:EfKEngun0
結局、その後娘は数年間かけて、
狐を失って傷心状態になった与作の心に付け込んだのと、与作の子と仲良くなる事で、
ついに婚約の約束を取り付けた。
喜んだ娘は、蔵に閉じ込められた狐にその事を告げた。

狐はついに、自分を嵌めた者達の抹殺を計画する。
まず最初に、自分に惚れ抜いてる男に媚を売って、満月の夜に鉄の輪を外させた。
そして輪を外した男を殺して食って、力を回復させた。
やがて娘と与作の結婚式の時に狐の姿で乗り込み、娘を惨殺し、ついでに共犯者の長男も惨殺した。
与作は、狐が生きてた事と、いきなりの凶行に驚愕した。

狐は正気に戻ると、凄い速度で森に逃げていった。
その後、幾度も山狩りが行われたが、その度に多数の犠牲者を出した。
やがてその噂を聞いて数多くの腕自慢が各地から集まって、山狩りに参加したが、結果的には変わらなかった。
ちなみに、この頃の与作は、
事の顛末を村長から土下座されながら聞かされた事と、真作が狐に激しい憎悪を持っている事に苦悩していた。


193 :156:2008/07/27(日) 15:07:29 ID:EfKEngun0
山狩りが行われなくなった後、近隣の村々で神隠しが多発。
それが狐のやった事だと気がついた与作は、ついに覚悟を決めて、
村長から槍を貰い、狐退治に向かった。

狐は人の姿で与作を出迎えた。
狐は微笑を浮かべて、
「やっとその気になってくれたか。待ってたんだぞ、お前が私を殺しに来る事を」
与作は苦しげに、
「もうこんな事はやめてくれだ!おらに出来る償いなら何でもする!だから・・・」
狐は悲しげに、
「お前に出来る償いなんて無いし、償う必要も無い。私とあの娘が一番悪いのだから」
与作は顔を上げ、
「なら一緒に帰ろう。そして一緒に皆に謝ろう。
 皆が許してくれなかったら、真作も連れて一緒にどこかへ逃げよう」
狐は首を振り、
「無理だな。自分が一番悪いとわかってても、お前や村人や人間への憎悪は消えないんだ」
そして狐は、牛の何倍も大きい狐の姿に変わって、
「お前を殺せば、この気持ちが消えるのかどうかわからない。試すのも怖かった。
 だがお前と私が剥き出しでぶつかり合えば、この不快な気持ちも消えるかもしれない。
 さあ立ち上がれ与作!!
 お前が私を殺さないというのなら、手始めに真作を含めた近隣の村の連中を皆殺しにするぞ!!」
与作は槍を強く握り、
「狐・・・それがおめえの望みなら・・・行くぞ!!」
狐へ向かい駆け出した。

「『狐の加護を受ける家系』3/4」に続く


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